前回は、建設業の経営改善は「進捗管理表」を指標に進めていくべき理由について説明しました。今回は、建設業で利益目標を達成するための「会議」の進め方について見ていきます。

仕入れ交渉は「納品前の交渉」が絶対条件

工事の原価管理においては、当然のことであるが、「仕入れ交渉」が重要になる。見積もり依頼に関しては、同業種で2社以上と行うべきだ。それも徹底して行わなければならない。長年取引している仕入れ業者が、実は仕入れ価格の足を引っ張っている場合もあり、必要に応じて馴染みの業者の見直しも必要だ。

 

仕入れ交渉においては、納品前の交渉が絶対条件である【図表1】。納品中、納品後、ひどい場合は支払いのときに値引き交渉をする会社があるが、相手の立場になってみるべきだ。そんな会社と今後も良い関係を続けるために安くしようと思うだろうか。

 

信頼できる仕入れ業者があってこそ工事もスムーズに進む。発注者の立場を勘違いした横柄な態度や、必要以上に業者を天秤にかけるのも厳禁である。結局、そういう態度はいろいろな意味で自社の首を締める結果になる。

 

様々な会議日程は、月次であらかじめ決めておかなければならない。「集まれるときに会議をやっている」と、得意気に語られるときがよくあるが、そんな会議で意味のある話し合いができているのを見たことがない。それはただの「状況連絡会」であり、本来の会議ではない。

 

都度設定や都合のよいときに、といったやり方は絶対に厳禁にしてほしい。経営者の参加に関しては、営業会議や工事会議は経営者が主導するのではなく、基本的には営業部長や工事部長に任せ、経営者は時々参加する、というスタンスをとったほうがよいだろう。あまり任せきりだと方向性が逸れてしまうことも少なくないからだ。担当者だけでは、利益の進捗管理という狙いから逸れて、細かい話になりがちである。

 

会議の時間に関しては、やはり1時間程度をめどにしなければならない。2〜3時間も会議をやる会社があるが、明らかに長すぎる。そのような長時間の会議ほど中身が薄い。そんな会議は誰も出たくないだろう。

 

【図表1】 仕入れ交渉でのポイント

情報の流れが格段に良くなる「報告のルール」作り

ここで、会議進行に関して押さえどころをいくつか記しておく、

 

目的は利益目標に対する進捗の確認。現在の獲得利益がいくらで、あといくらか必要か、残りの数字をいかに獲得する予定かを各自発表し、その方法に対して議論する。

②司会進行者は、参加者全員に都度発言を求める。進行者の一方通行は厳禁。

③数字以外における現状の課題・問題点を出す。

対応策を決め、対応における責任者およびその対応の期限を決める。

⑤対応策については次回の会議でその結果を発表する。

⑥簡潔でもいいので議事録をとる

開始時間厳守。終了時間も基本厳守。遅れる場合は事前連絡。

⑧やる気のない態度や周りを不快にさせる態度は厳禁

携帯電話の着信、携帯メールの閲覧、腕組み、足組みなども厳禁

 

通常、会議では「趣旨と異なる発言や質問に合わない返答をする人」「異常に長く話す人」が続々と出てくる。そこは司会進行がある程度、遮断し、内容を咀嚼(そしゃく)して参加者に説明し直すことなども求められる。

 

また、上記の⑦⑧⑨はモラル・マナーの問題である。しかし、それすら守れない人が世の中にいかに多いことか。根本的には、その人たちの人生観や生い立ちが関わっているのだろうが、会社の会議での態度に限って言えば、そういった人たちは結局、会社や他の社員、経営者を舐なめているのである。そのような社員が全社の目標に向かって、周りと協力していくとはとても考えられない。

 

注意してもそのような態度が改まらない社員については、いかに優れた部分があろうとも(基本的にはないはずだが)、会社を辞めてもらったほうがよい。周りの社員も、そういった人に気を使って日々微妙な関係になっているはずだ。

 

会議では必ず「利益目標を達成するためにどうするか」ということを議論しなければならない。それこそが会社の軸だからだ。

 

そして、目標数字を追いかける習慣をつける必要がある。会議も3〜4回やると、「会社説明会」で聞いた内容が参加者に少しずつ分かってきて、腹落ちしてくる。目標と方向性がすり込まれていくのである。

 

会議を続けていくにあたり、欠席する人が増えたり、集まりの悪い会議が続くようなら、何のために会議をやるのか、そもそも会議は必要なのか、もう一度みんなに集まってもらって説明会を開くことなども考えるべきだ。

 

また、いつ、だれが、どのような報告を上げるのか、普段の報告のルールも決めておく。情報の流れが格段に良くなるはずだ。

 

【図表2】 会議の設定例

 

【図表3】 報告ルールの設定例

 

なお、年度も半ばを過ぎ、残り3カ月を切った段階では、当年度の進捗状況を踏まえて、次年度の経営目標を策定する。

 

部署別、個人別にまで落とし込めれば落とし込む。待遇改善の目安(ボーナスや昇給など)も盛り込む。これを毎年度、繰り返していく。

本連載は、2016年9月14日刊行の書籍『たった1年で利益を10倍にする 建設業のための経営改善バイブル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で利益を10倍にする 建設業のための経営改善バイブル

たった1年で利益を10倍にする 建設業のための経営改善バイブル

中西 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

ゼネコン、工務店、設備会社…etc オリンピック景気に隠れて、業界崩壊は刻一刻と近づいている。 「経費削減」「リストラ」一切なしで高利益体質へと変革する経営者必読の書。劇的な経営改善のために知るべきことを網羅!

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