(※写真はイメージです/PIXTA)

ねんきん定期便は、毎年1度、誕生月に日本年金機構から送られてくるはがき(または封書)です。このねんきん定期便、実は受給可能なすべての年金が記載されているわけではありません。ねんきん定期便の見方や注意点について、具体的な事例を交えてみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

ねんきん定期便に記載がない「加給年金」はもらえる?

 3.加給年金をもらう資格はあるはずだが、記載がない。もらえないのか? 

Aさんはテレビの特集で「加給年金」について知り、自身が65歳になって以降5歳年下の妻が65歳になるまで5年間加給年金が受給できると気づきました。しかし、ねんきん定期便にはこの加給年金について記載がありません。

 

この旨を職員に確認したところ、たしかにAさんは厚生年金に20年以上加入して、妻の厚生年金の加入歴は20年未満ですので加給年金の受給資格はあるそうです。ちなみに令和6年度の受給額は40万8,100円(月額3万4,008円)です。

 

しかし、加給年金は「ねんきん定期便」には記載していないそうです。その代わり、65歳以降の「年金決定通知書」や「支給額変更通知書」などに、該当期間中は受給額が印字されると教えてくれました。

「ねんきん定期便」で決まったAさんの老後

年金事務所に行った帰りに、Aさんは筆者の事務所を訪ねてきました。筆者に会うなり、年金事務所の職員から聞いた話をまとめて教えてくれました。

 

65歳からの年金受給額は、「ねんきん定期便」に書かれていた月額17万円に加えて、勤務先の記載漏れ分が月額約1万円、さらに加給年金が65歳から70歳まで月額約3万4,000円あるそうです。「このほか、厚生年金基金もあるのですが、若いころの短期間の就業だったのであまり期待できないと言われました」とAさん。

 

つまり、「ねんきん定期便」に記載されている受給額よりも、毎月4万4,000円増えるということです。

 

また、Aさんが悩んでいた60歳以降の働き方については、「あのあと夫婦で話し合い、谷間といわれる年金収入が始まるまでの5年間は働き、65歳でリタイアを考えているがそれでいいでしょうか」といいます。

 

そこで筆者は、Aさんが考えているプランで早速シミュレーションしてみることに。すると、老後破産の心配はまったくないことが明らかになりました。

 

65歳までは給与収入で貯蓄もでき、70歳以降は妻の年金収入もあることから、リタイア後の暮らしで退職金を取り崩すことはあっても、貯蓄は取り崩すことはなさそうです。

 

Aさんは、「いやあ、ねんきん定期便をしっかり確認してよかったです。きっかけをくれてありがとうございました」と安堵としながらも、「それにしても、焦って窓口でカッとなってしまい、申し訳なかったな……」と反省している様子でした。

 

「ねんきん定期便」は、老後の収入の指標を示す大事な書類です。届いたらすぐに確認するようにしましょう。また、日本年金機構が提供するHP「ねんきんネット」に登録しておけば、見たいときにいつでもご自身の記録や受給見込額などを確認することができるためおすすめです。

 

 

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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