年金事務所の職員が教えてくれた「ねんきん定期便」の実際
しかし、そんなAさんの必死な訴えを優しく受け止めるように、年金事務所の職員は慣れた様子でAさんの3つの疑問を解決してくれました。
1.27歳~30歳まで勤めた会社の記録がないのでは?
Aさんは、「ねんきん定期便」の3ページを指しながら、「これまでの『年金加入履歴』」に記載されている勤めた会社名に27歳から30歳まで勤めた会社の記載がなく、その間は『空いている期間があります」と印字されているんです」と指摘。
年金事務所で改めて調べてみると、年金の記録が漏れていることがわかりました。実際に勤めていた確認がとれたことから、年金記録に反映する手続きをしてもらいました。
2.38歳~42歳までの「厚生年金基金」への加入について、身に覚えがない
Aさんは、続けて職員に訴えます。「同じページの年金加入履歴の38歳から42歳まで勤めた会社に『基金加入期間』と印字があるのですが、まったく身に覚えがなく……これ、他人の記録ではないですか?」
そこで職員はAさんと一緒にねんきん定期便を確認。すると、3ページ下方の「厚生年金保険計」の欄には基金に「36ヵ月」と印字がありました。その会社に勤めていた期間と合致することから、このとき勤めていた会社では厚生年金基金に加入していたことがわかりました。
「厚生年金基金」とは、国が行う老齢厚生年金の報酬比例部分の一部の支給を、基金が代行して行い、加えて企業独自の上乗せ給付(プラスアルファ)の年金を基金から給付する制度です。
法改正により2014年4月以降、厚生年金基金を解散するかまたは確定給付企業年金へ移行することが促されました。またAさんのような2014年3月31日までに、厚生年金基金を短期間で脱退したり、同日までに解散した厚生年金基金加入員に対する年金は、企業年金連合会から支給されることになっています。
企業年金連合会によると、令和4年度末で厚生年金基金の未請求者は約107万7,000人いることがわかっています。
年金事務所で改めて調査してもらったところ、このねんきん定期便の記載どおりにAさんが実際に厚生年金基金に加入していたことが確認できました。保険料もきちんと給与から天引きされており、給与明細にその金額も印字されていたそうです。
ただ、Aさんは短期間の就業であり、この会社はすでに廃業していることから、基金分は企業年金連合会から受け取ることになります。なお、企業年金連合会※に記録があることも確認してもらいました。
※ 「企業年金連合会」とは、厚生年金基金の中途脱退者、または解散基金加入員などの年金記録とその原資を預かり、一定の条件で年金を支給する組織のこと。