(※写真はイメージです/PIXTA)

収入が減ったら、そのぶん支出を減らす……当たり前のように感じますが、生活水準を下げることは決して簡単ではありません。上場企業の重役であった夫を亡くした“元セレブ妻”Aさんの事例をもとに、資産に余裕があっても起こり得る「老後破産」の恐ろしさと、その対応策をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

「夫の死」を受け入れられない72歳の元セレブ妻

現在72歳のAさんは、3年前に最愛の夫Bさんを亡くしました。いまはBさんが遺してくれた都内一等地の低層マンションにひとり生活しています。Aさんには2人の子どもがおり、40歳の長男Cさんは妻と子と近所に、42歳の長女Dさんは夫の海外赴任先に同行しています。

 

Aさんよりひとつ年上であったBさんは、上場企業の重役まで勤めあげたエリートでした。Bさんは国外への出張が多く、また夫人同伴の機会もあったため、公私ともに夫婦で海外に出かけることや、外国の賓客を迎えるなどしていたそうです。

 

さらに、Bさんがある百貨店の法人外商部など渉外も担当していた縁から、その百貨店の個人の外商顧客として高級な和洋服や宝飾品を購入するなど、まさにセレブといえる生活を謳歌していました。

 

しかし、悲劇は突然訪れます。3年前、70歳になったBさんは取締役を辞任。これまでのプレッシャーから解放されたその数ヵ月後、脳梗塞で帰らぬ人となったのです。

 

夫の死後も生活を変えないAさん…子どもは心配するが

Bさんの退職金や死亡保険金などにより、葬儀や相続税の支払いなど諸々が済んだ段階で、Aさんの口座には8,000万円ほど残っていました。Aさんはこれまで金銭的な苦労をしたことがなく、節約・節制とは無縁の人生。夫が亡くなった後も相変わらず派手にお金を使う生活を続けていました。

 

そんなAさんに対し、長男のCさんは何度か注意をしていたそうです。そのたび、Aさんは「わかっているわ……これが最後の買い物だから」と言いますが、しばらくするとまた外商がAさんの自宅を訪れます。

 

みかねたCさんが「もう父さんはいないんだから、身の丈にあった生活をしないと! このままじゃ破産してしまうよ」と真剣に諭したところ、Aさんは「ワタシ、お父さんが生きていたあの頃を忘れたくないの……だからお願い、好きにさせて」と涙ながらにCさんに訴えました。

 

Cさんは、この現状を姉や母方の伯父、叔母に相談。すると、異口同音に「お母さんは寂しいんだよ。Cは近所に住んでいるんだし、しっかり見守ってあげて」と言われたそうです。そのため、またしばらくは静観することにしました。

 

次ページなにかおかしいぞ…Cさんが感じた「母親の異変」

※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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