【不動産投資のワナ】事件番号「ヌ」、事件番号「ケ」…専門家も回避する「競売物件」購入のコワい実情〈不動産専門弁護士が解説〉

【不動産投資のワナ】事件番号「ヌ」、事件番号「ケ」…専門家も回避する「競売物件」購入のコワい実情〈不動産専門弁護士が解説〉
(画像はイメージです/PIXTA)

一般的なサラリーマンの副業としても人気の不動産投資。堅調な収益があげられるようになると、新たなチャレンジとして「お宝物件」を狙った「競売物件」の購入に興味を持つ方もいるようです。しかし、競売物件は不動産のプロもためらう、かなりの危険度をはらむものだといえます。不動産を専門領域とする、山村法律事務所・代表弁護士の山村暢彦氏が解説します。

競売物件、裁判所から付された事件番号「ヌ」と「ケ」の違い

さらに競売物件には、裁判所から「ヌ」あるいは「ケ」という「事件番号」が付されています。

 

事件番号は、下記のように表示されているものです。

 

「〇〇地方裁判所 令和〇年(ヌ)第〇〇号」

「〇〇地方裁判所 令和〇年(ケ)第〇〇号」

 

じつはこの「ヌ」物件と「ケ」物件には大きな違いがあり、一般的に、「ケ」物件に比べて、「ヌ」物件については安易に手を出さないほうがよい、などともいわれています。2つの違いとは、どういったものなのでしょうか。

 

「ケ」物件

「ケ」物件とは、抵当権等の担保実行にて競売物件になった事件です。すなわち、ローンを返済できなくなったから、金融機関が抵当権等を実行し、競売にかけられた物件となります。競売物件としては、メジャーな類型といってよいでしょう。

 

◆「ヌ」物件

「ヌ」物件とは、一般的な金銭債権等、裁判の結果、強制競売にかけられる物件をいいます。例えば、原告が勝訴して、被告は原告に対して5,000万円を支払いなさい、という判決が出たところ、被告が払えないので、被告の所有している不動産を強制競売にかけた…といった状態になります。

 

「ヌ」物件については、純粋にローンが支払えなくなったというよりも、異なる理由で裁判の結果、債権回収の1つの手段として利用される競売手続となるため、確実に競売手続が進むのか「わからない」という不安定さがあります。

 

担保競売手続が進み、

 

①買受人の決定後は、その同意がないと手続きを止められない

②代金支払い後は、手続きを止められない

 

という制限はありますが、これらの段階までは、担保競売手続自体が途中中断で終結してしまう可能性があります。すなわち、労力を使って物件等を調査しても、途中で手続きがなくなる可能性があるというのが、「ヌ」物件の1つのリスクだといえます。

 

ここは、裁判の仕組みが複雑でわかりづらいところなのですが、

 

①第一審判決後、控訴審の決着前に、強制執行=担保競売ができてしまう

②控訴審決着後であっても、担保競売以外の和解(支払い)がなされてしまう

 

と、要は、強制競売手続と並行して、和解や控訴審の手続が進行するため、その進行具合によっては、競売手続が中断してしまう可能性があるということなのです。

 

加えて、「ケ」物件の場合には、住宅ローン等の返済ができないために立ち退くということで、住人側も出ていくことに、渋々ながらも同意しているというケースが比較的多いですが、他方、「ヌ」物件の場合には、直前まで、裁判等でバチバチの戦いを繰り広げていたため、強制競売に納得していないというケースが多々あるのです。

 

そのため、占拠者の排除を買主がやらなければならない点は、「ケ」「ヌ」どちらも共通なのですが、確率的に「ヌ」物件のほうが退去に納得していない占有者が多い可能性が高いのです。

競売物件の購入は、プロでも難しい…個人投資家の参入は困難

少々、複雑になってしまいましたが、競売物件の難しさと、「ケ」「ヌ」物件の違いについて解説しました。

 

競売物件を扱うのは、不動産会社のなかでも、その扱いに慣れている、専門化している業者が多いという印象です。また筆者も、不動産会社から相談を受けた際には「安易に不動産競売に手を出すのは危険です」とお伝えしています。

 

また、不動産会社の担当者からは、いまでは専門業者が競売物件を買い集めていることから、昔に比べ、そこまで安くはなくなったという話も聞きます。お宝物件があるように思いがちな競売手続ですが、実態はなかなか難しいものがあるのです。

 

 

山村 暢彦
山村法律事務所 代表弁護士

 

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※本連載は、山村法律事務所・代表弁護士の山村暢彦氏による書き下ろしです。

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