60代嘱託社員のもとに舞い込んだ「建設費用4億円」のマンション建設計画…保有する「200坪・毎月の上がり15万円」のショボショボ駐車場、大化けの可能性は?

60代嘱託社員のもとに舞い込んだ「建設費用4億円」のマンション建設計画…保有する「200坪・毎月の上がり15万円」のショボショボ駐車場、大化けの可能性は?
(※写真はイメージです/PIXTA)

ある60代の男性が保有する駐車場は、形状が特殊なうえ兄弟との共有となっているなど、権利関係も複雑です。そして明確なのは、現状では収益面のメリットがないばかりか、節税にもつながらないということ。そんな男性に業者から賃貸物件の建設を持ち掛けられますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

叔父から相続した、収益イマイチな駐車場

今回の相談者は、65歳の嘱託社員の鈴木太郎さんと、60代の会社員の鈴木二郎さんです。2人はご兄弟で、数年前に叔父から相続した、いまは2人の共有名義となっている土地をどうするべきか、アドバイスがほしいとのことで筆者のもとを訪れました。

 

太郎さんと二郎さんは相続した土地を駐車場として貸しています。しかしある日、不動産会社からマンション建設を勧められ、困惑しているそうです。

 

「200坪程度の土地に4億円の建設費用で、マンション建設を持ちかけられました。運営は専門業者によるサブリースだそうです。私はもう65歳。中小企業の嘱託社員で、収入も高くありません。今回の話は金額が大きく、ちょっと理解が追い付きません…」

 

と、太郎さん。二郎さんも、

 

「毎月お小遣いが入るなら…と喜んで相続したのですが、思ったほどでもなく…。マンション建設もいいのでしょうが、金額大きすぎでプレッシャーです。それに、万一子どもに負担がかかるようなことになっては…」

 

と困り顔です。

 

2人の説明では、駐車場の土地固定資産税は年間120万円で、毎月の駐車場の収入は15万円。これではほとんど手元に残りません。また、駐車場のままでは節税効果がなく、相続税が1,000万円以上かかる見込みで、現状のままでは、将来的に問題が発生するリスクが高いといえます。

現状は兄弟で共有だが…形状が不整形で2分割は困難

お話を聞く限り、2人は日ごろから親しく、現状は平穏な状況ですが、それでも今後のことを考えれれば、共有は解消しておく必要があります。

 

この駐車場はいわゆる旗竿地で、出入り口が狭く、奥が広くなっているため均等な2分割はできません。

 

「まずは賃貸物件の建設を検討し、土地の収益性を高めてから、権利関係を整理することが得策でしょう」

 

筆者の提携先の税理士がこのように説明すると、2人はうなずきました。

高額な費用がかかる賃貸物件、建設して大丈夫!?

賃貸事業を行う場合、収支バランスが取れることが必須条件です。ほかにも、建物のコンセプトや仕様など諸々のポイントに対し、適切な判断が必要となりますが、一般の方が判断するのは容易ではありません。

 

では、メーカーに一任すればいいのかというと、そうとも言い切れません。建ててはみたものの収支が合わず、後悔している人は少なくありません。

 

賃貸物件の建設には多額の費用がかかります。そのためにも、ひとつの業者にだけ話を聞くのではなく、複数の業者から提案を受け、総合的に判断する必要があります。

 

2人は税理士から上記の説明を受け、まずは提案してきた業者以外にも、複数の業者から見積もりを出してもらうことにしました。

 

「ほかの業者にも話を聞き、よく考えたいと思います」

 

そういって2人は事務所を後にされました。

せっかく承継した土地も、保有するだけでは「マイナス財産」

土地持ちの方の多くは、先代から受け継いだ状態のまま保有することを望みますが、土地は保有しているだけでは固定資産税のかかる「マイナス財産」でしかありません。立地に合わせ、収支バランスの取れる活用をすることが不可欠です。

 

むしろ、土地の活用なくしては、次世代への財産の承継や節税は実現しません。今回の2人のケースでは、駐車場のままでも収益は上がらず、また、節税にもならないため、何らかの対処が必要なケースです。

 

絶対に譲れないのは、賃貸事業の収支バランスが取れること、そして、建設費が適正であることです。建設会社の合い見積もりを取り、比較検討しましょう。とはいえ、建物のコンセプトや仕様など諸々の重要事項についても、一般の方が判断するのは容易ではなく、また、業者の提案どおりに建てて後悔する事例もあります。今回、太郎さんと二郎さんが他者にアドバイスを求めたのは、適切な判断だといえます。

 

日本では土地活用のコンサルティングがいまだ定着していませんが、長期投資となる賃貸事業は、建設から運営のプロセスにおいて、さまざまな判断が必要です。最初に多額の費用がかかりますから、失敗はぜひとも回避したいものです。その意味では、不動産の売買に仲介業者が入るように、賃貸事業のコンサルタントも有益な存在だといえるでしょう。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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