米国の「失業者の数」は大幅に増加している
次に、「失業率」ではなく、「失業者の数」をみてみましょう。
[図表3]に示すとおり、「失業者の数」を前年同月比でみると、直近では「+13.6%」の伸びで、失業者の数は歴史的にみても、大幅に増加しています(→念のために申し添えますと、後の図でもみるとおり、離職率は低下しており、「好条件を得るための自発的な失業は減って」います)。
過去の動きをみると、奇しくも、この「+13.6%」が「運命に分かれ道」になっているようです。
というのも、1956年8月と1967年10月にも、この「失業者の数の伸び」は+13.6%に到達していますが、これら2つの事例では景気後退入りを回避しています。
他方で、この数値が「+13.6%」を超えると、景気後退入りが避けられていません。
あくまでパターンをみているだけですが、来月頭に今月分のデータが出てくれば、行動の要否が明らかになる可能性があります。
さらに、[図表4]に示すとおり、「フルタイムの就業者数」は前年同月比で3ヵ月連続でマイナスです。1-2ヵ月ですと、統計のブレもありますが、3ヵ月連続でマイナスであれば、実際に「マイナス」と考えてよいでしょう。
この「フルタイム就業者数の伸び」は、1994年1月、3月を除き、そして、データがとれる限り、マイナスになると、景気後退入りが避けられていません。
合わせて、「パートタイム就業者数の伸び」は上昇して、「フルタイム就業者数の伸び」との格差は過去の景気後退期並みに拡大しています。
企業によるパートタイム就業者の選好は、企業が慎重姿勢になっている可能性を示唆します。もしそうなら、それは予測というよりも、実際の受注や客足の状況を観察した上でのアクションでしょう。
フルタイムからパートタイムへの振り替えは、労働者の所得が減少することを意味します。所得の減少は個人消費に反映されると考えるのが自然です。
雇用PMIも悪化している
労働市場のスピード鈍化とともに気がかりなのは、4月分の雇用統計と同じ週に公表されたISM景気指数です。
総合指数がともに「50割れ」に転じたほか(→ただし、単月なのでなんとも言えません)、本稿の主題である雇用指数も「50割れ」しています。
賃金も鈍化の方向
最後に、FRBが重要視しているインフレ率の「おおもと」である賃金も伸びが徐々に鈍化しており、先行する離職率を考えると、今後さらに賃金のインフレ率は鈍化し、それに合わせて一般物価のインフレ率も鈍化するとみられます。