(※写真はイメージです/PIXTA)

足元、米国株の主要3指数(S&P500、NYダウ、NASDAQ)はいずれも史上最高値水準で推移しており、雇用の増加も続くなど、米国経済はまだまだ好調のようにみえます。しかし、フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏は、米国について「来年あたりの景気後退入りを考慮する必要がある」といいます。いったいなぜか、その根拠を詳しくみていきましょう。

米国の「失業者の数」は大幅に増加している

次に、「失業率」ではなく、「失業者の数」をみてみましょう。

 

[図表3]に示すとおり、「失業者の数」を前年同月比でみると、直近では「+13.6%」の伸びで、失業者の数は歴史的にみても、大幅に増加しています(→念のために申し添えますと、後の図でもみるとおり、離職率は低下しており、「好条件を得るための自発的な失業は減って」います)。

 

過去の動きをみると、奇しくも、この「+13.6%」が「運命に分かれ道」になっているようです。

 

というのも、1956年8月と1967年10月にも、この「失業者の数の伸び」は+13.6%に到達していますが、これら2つの事例では景気後退入りを回避しています。

 

他方で、この数値が「+13.6%」を超えると、景気後退入りが避けられていません。

 

あくまでパターンをみているだけですが、来月頭に今月分のデータが出てくれば、行動の要否が明らかになる可能性があります。

 

[図表3]米国の失業者数(前年同月比)
[図表3]米国の失業者数(前年同月比)

 

さらに、[図表4]に示すとおり、「フルタイムの就業者数」は前年同月比で3ヵ月連続でマイナスです。1-2ヵ月ですと、統計のブレもありますが、3ヵ月連続でマイナスであれば、実際に「マイナス」と考えてよいでしょう。

 

この「フルタイム就業者数の伸び」は、1994年1月、3月を除き、そして、データがとれる限り、マイナスになると、景気後退入りが避けられていません。

 

合わせて、「パートタイム就業者数の伸び」は上昇して、「フルタイム就業者数の伸び」との格差は過去の景気後退期並みに拡大しています。

 

企業によるパートタイム就業者の選好は、企業が慎重姿勢になっている可能性を示唆します。もしそうなら、それは予測というよりも、実際の受注や客足の状況を観察した上でのアクションでしょう。

 

フルタイムからパートタイムへの振り替えは、労働者の所得が減少することを意味します。所得の減少は個人消費に反映されると考えるのが自然です。

 

[図表4]米国のフルタイム就業者とパートタイム就業者数(前年同月比)
[図表4]米国のフルタイム就業者数とパートタイム就業者数(前年同月比)

 

雇用PMIも悪化している

労働市場のスピード鈍化とともに気がかりなのは、4月分の雇用統計と同じ週に公表されたISM景気指数です。

 

総合指数がともに「50割れ」に転じたほか(→ただし、単月なのでなんとも言えません)、本稿の主題である雇用指数も「50割れ」しています。

 

[図表5]ISM製造業・非製造業景気指数
[図表5]ISM製造業・非製造業景気指数

 

[図表6]米国のISM雇用指数(平均値)と非農業部門雇用者数(前年同月比)
[図表6]米国のISM雇用指数(平均値)と非農業部門雇用者数(前年同月比)

 

賃金も鈍化の方向

最後に、FRBが重要視しているインフレ率の「おおもと」である賃金も伸びが徐々に鈍化しており、先行する離職率を考えると、今後さらに賃金のインフレ率は鈍化し、それに合わせて一般物価のインフレ率も鈍化するとみられます。

 

[図表7]米国の離職率と平均時給(前年同月比)
[図表7]米国の離職率と平均時給(前年同月比)

 

[図表8]米国の離職率と雇用コスト指数(前年同月比)
[図表8]米国の離職率と雇用コスト指数(前年同月比)

 

次ページ「米国の景気後退」を考慮した投資戦略とは

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