5月の注目点=米ドル高・円安の限界確認で「反動」も
ただ29日、160円前後から米ドル/円は急反落に向かいました。確認されていないものの、日本の通貨当局による米ドル売り介入があった可能性もありそうです。そもそも、すでに見てきたように米ドル買い・円売りは記録的に拡大しており、それは「行き過ぎ」懸念が強くなっている可能性を示していることから、さらなる米ドル買い・円売りにはおのずと限度があり、その反動も入りやすくなっているのではないでしょうか。
また、米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率は足元で3割程度まで拡大しましたが、これは循環的な上昇限界圏に達している可能性を示しています(図表5参照)。その意味では、米ドル高・円安は円安阻止介入などの「きっかけ」があれば、いつ終わってもおかしくない、そういった状況が続いていると考えられます。
ちなみに、米ドル/円の短期的な上昇は、90日MAからのかい離率が1割前後に達すると「行き過ぎ」懸念が強まる習性があります(図表6参照)。
足元の90日MAは149.1円なので、160円を超えてくると、同かい離率は7%以上に拡大する計算になるため、短期的な「上がり過ぎ」懸念も強まってきた可能性があるでしょう(図表7参照)。
以上のように、米ドルの「買われ過ぎ」や、短中長期の「行き過ぎ」懸念から、5月は当面の米ドル高・円安の限界を確認するタイミングになる可能性が高いのではないでしょうか。介入などにより、「行き過ぎ」の反動が入るようなら、ある程度は「米ドル安・円高」に戻す可能性もあるでしょう。
ただし、150円を大きく割れて米ドル安・円高に戻すためには、日米金利差の米ドル優位・円劣位が本格的な縮小に向かう見通しが必要になるでしょう。そのためには、日銀の利上げでは影響が限られ、基本的にはFRB(米連邦準備制度理事会)の連続利下げが始まる見通しが必要になりそうです。
米連続利下げの見通しが浮上するのは、米景気の先行きに急減速の可能性が出てくることが前提になりますが、今のところその兆しはありません。足元の米景気、4~6月期の米実質GDP伸び率について、定評のあるアトランタ連銀の経済予測モデルのGDPナウは、26日、3.9%といった高い予想値を発表しました。
以上を踏まえると、5月の米ドル/円は150~162円の予想レンジで、米ドル高・円安の限界を確認したあとの反動が、どれだけ入るかに注目します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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