(※写真はイメージです/PIXTA)

実は「薬を飲みたがらない老親」に悩む現役世代の声が少なくありません。本記事では和田氏の著書『老化恐怖症』(小学館)から一部抜粋し、「薬を無理にでも飲ませるべきか否か」ついて精神科医の和田秀樹氏が解説します。

薬をのまない老親、無理にでも飲ませるべきか

「薬を飲みたがらない老親」に悩む現役世代の声も聞こえてきます。この点については、医療の側の問題から考えてみる必要があります。

 

「高齢者の薬漬け問題」も知っておく

今の日本の医療が、患者に薬を多く出し過ぎているのは、おそらく間違いないでしょう。

 

たとえば、検査をして「血圧が高い」となれば循環器内科では降圧剤が処方されます。「トイレが近い」と泌尿器科にかかれば、そこでも薬が出される。さらに「血糖値が高い」となれば、別の内科で別の薬が出されます。

 

専門の診療科を受診するたびに薬が処方され、「気が付いたら10種類以上の薬を服用していた」という高齢の患者さんは珍しくないのです。

 

そうして多量の薬をのみ続ければ、どうなるか。薬を代謝・排泄する肝臓や腎臓の機能が衰えてきた高齢者ほど、副作用による体へのダメージを受けやすいため、多剤併用による健康被害が出やすくなるのです。

 

健康を取り戻すためにのむ薬が、体の具合をおかしくするという、本末転倒の事態が起こります。

 

高齢者の薬漬け医療の問題は、1990年代から明らかになっていました。先述したように、高齢になればなるほど、肝臓の分解能力・腎臓の排出能力が落ちるため、薬の成分が体に溜まりやすくなる。そのことによる弊害は副作用などで明らかですが、一方、薬を飲まなかった時にどうなるか(害があるのか)については、実はわかっていません。

 

たとえば、血圧にしろ、コレステロールにしろ、それらの数値を下げる薬を飲んだ人と飲んでいない人の大規模な比較調査が、日本ではほとんど行われていない。つまり、科学的データに基づくのではなく、「数値は下げるほうがいい」という医者の先入観で薬が処方されている側面があるわけです。

 

実際、体型で言えばやや肥満気味の、数値で言えばコレステロールがやや高めの人のほうが長生きしている実態は、統計上明らかになっています。

 

医者が出す薬をどこまで信用できるかは、いったん立ち止まって考えてみる必要がありそうです。

 

「薬で下げ過ぎる」ほうが怖い

もちろん、病気や薬の種類によっては飲まないことで健康を損なう薬もないとは限らないのですが、一方、患者さんによっては飲まないほうが元気でいられるケースがあるのは事実です。

 

2022年11月、俳優の渡辺徹さんが61歳で亡くなった際には、長年闘病を続けた糖尿病が命を縮めた原因であるかのような報道が一部に見られました。しかし、渡辺さんは30代の若さで糖尿病を患ってから、血糖値のコントロールを厳しくしたり、ダイエットにも取り組んでこられた。

 

つまり、糖尿病は薬などで血糖値を厳しくコントロールしさえすれば長生きできる、という単純なものではないのです。

 

一方、あまり知られていませんが、「低血糖のダメージ」は意外に大きいものです。私の場合、一時、血糖値が660㎎/dlまで上がったことがありますが、その時は喉が渇くぐらいで他に症状はありませんでした。しかし、血糖値が30〜40㎎/dlまで下がると、意識障害や痙攣を起こすのみならず、命を失う危険さえあります。

 

つまり、糖尿病の治療で血糖値を下げすぎる害のほうがよほど怖いと思います。

 

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