「薬をのまないほうが元気」な人もいる
高齢の方で「薬嫌い」という人のなかには、「薬は怖いものだ」という信念のようなものがある人もいれば、「薬を飲むとだるくなるからのまない」という人もいることを知ってほしいのです。
たとえば血圧を下げるための降圧剤は、人為的に低血圧にしているようなもの。低血圧の症状には、立ちくらみやめまいなど、日常生活に支障をきたすものが含まれます。
80代の親が「薬を飲みたくない」という理由が、「飲むとだるくなるから」だとしたら、薬を飲まないほうが本人にとって幸せのはずです。私自身、降圧剤など数値を下げる薬を飲んではいますが、「どこまで下げるか」を注意しています。
もともと血圧は上が220だったところ、一時期は140まで下げましたが、頭がフラフラして調子が悪かった。そこで現在は170でコントロールしています。血糖値は一時660まで上がったのを、現在は300くらいでコントロールしています。
その理由は1日のうちに低血糖の時間帯を作りたくないから。冷や汗や動悸、意識障害など低血糖による害のほうが、日頃運転をしている私には問題が大きいからです。また低血圧によりフラフラするのと同様、仕事ができなくなってしまうという問題もあります。
つまり、薬を飲んでどこまで数値を下げるかについては、健診の基準値などを目安にすればよいのではなく、その本人にとって望ましい状態が何かを考えるべきです。
もし、本人なりの理由で薬を自己判断でやめていた場合、かかりつけ医の受診に付き添ってあげて、主治医にその旨を相談してみるとよいでしょう。本人の話に耳を傾けてくれる医師であれば、薬を減らしたり、種類を変えるなどの対策を考えてくれるはずですが、ネット上の医師の意見をみる限り、そんな医者はほとんどいません。
私の経験では、薬を医者に相談せずに自分で減らしてもせいぜい元の状態に戻るだけで、深刻な問題が起こったことはほぼありません。
和田 秀樹
精神科医
※本記事は『老化恐怖症』(小学館)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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