(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の不安を少しでも減らすため、資産形成に励んでいる人が多いなか、「実家(義実家)がお金持ちだから」と、自助努力を怠っている人もいるかもしれません。今回、裕福な義実家の遺産を密かに狙うAさん(60歳)の事例から、老後の資金計画の重要性と家計改善の方法をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

生活水準はキープしたい…このままだと80代で「老後破産」に

筆者は、沈痛な面持ちのAさんから「これからどうすればいいんでしょう。どうにかお金のストレスなく老後を過ごしたいのですが、できますでしょうか?」と相談を受け、まず、夫婦の今後の収支見込みをヒアリングしました。その結果は図表のとおりです。

 

出所:筆者が作成
[図表1]A夫婦の今後の収入見込額
出所:筆者が作成

※ 厚生年金保険の加入期間20年以上の夫が65歳になり、妻が昭和41年4月1日までに生まれ、厚生年金や共済年金に20年以上加入していなければ、「振替加算」が妻の老齢基礎年金に加算される。ただし今回の事例のように扶養されている妻が夫より年上の場合は、年金事務所に申請が必要。なお加算額は、生年月日ごとに変わる。Bさんは昭和39年10月生まれなので、受給額は1万5,732円(月額1,311円)となる。老齢厚生年金の受給額には老齢基礎年金分を含む。

 

また、現在の夫婦の支出額は毎月38万円です。生活水準は変えたくないとのことで、生涯この金額を維持したいそうです。現在の貯蓄は、住宅ローンを繰上げ返済したこともあり550万円となっています。

 

[図表1]をみるとわかるように、夫Bさんが65歳で退職金を受け取ったあとは、家計収入は月額35万円となります。このままの支出額で生活すればこれ以降は貯蓄を取り崩す生活となり、80歳を過ぎるころには家計が破産しかねません。

老後の収入を増やすため、「年金の繰下げ受給」を検討

家計破産することなく、老後も38万円の支出を維持するには、なにかしらの方法で「収入を増やす」必要があります。

 

具体的には、

 

<Bさん>

・副業を始める

・65歳以降も働く

 

<Aさん>

・パートを始めて収入を得る

 

<夫婦ともに>

・新NISAを始めるなど、投資を行う

・年金の繰下げ受給を行う

 

といった方法があるでしょう。

 

「年金の繰下げ受給」は、老齢年金を65歳から受給せず、66歳から75歳0ヵ月までの任意のタイミングに繰り下げる(=受給開始を遅らせる)ことで、その分増額した年金を受け取ることができるというものです。

 

この際、老齢厚生年金と老齢基礎年金は一緒に繰り下げることもできますが、別々に繰り下げることも可能です。1ヵ月繰り下げることに0.7%ずつ増額した年金を受給できます。

 

たとえば、妻Aさんが65歳のとき、夫Bさんはまだ62歳です。Bさんが退職金を受け取れる65歳までAさんが年金受給を3年待つ(=36ヵ月繰り下げる)と、

 

0.7%×36ヵ月=25.2%

 

と、25.2%増額した年金を68歳から受け取れるということになります。Aさんが65歳から年金を受け取ると104万9,600円ですが、68歳から受け取ると131万4,099円と、年間26万4,499円(月額2万2,041円)受給額が増えます。

 

こうすれば、あくまで机上の計算ですが、Aさんが83歳になるまでは毎月約37万円の支出資金は確保できます。もし、Aさんが68歳よりさらに老齢基礎年金を繰下げれば、より増額した年金を受給できます。ただし、繰下げ期間中「振替加算」は支給されず、また繰下げによる増額の対象外となるため注意が必要です。

 

次ページ「余裕を持った老後」を送るための“最短ルート”は

※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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