争族の火種となった“論理的な大地主の80代父の遺志”…「1億円の相続税」のため、自身の老後資金で身を削る兄 vs. 感情論でキレた弟からの「地味に“効く”嫌がらせ」【元メガ・大手地銀の銀行員が助言】

争族の火種となった“論理的な大地主の80代父の遺志”…「1億円の相続税」のため、自身の老後資金で身を削る兄 vs. 感情論でキレた弟からの「地味に“効く”嫌がらせ」【元メガ・大手地銀の銀行員が助言】
(※画像はイメージです/PIXTA)

代々の不動産を守り継ぐ地主の相続。特に、継承する子が複数いる場合の相続対策は、遺産分割に向けた入念な準備が肝要です。準備が不十分なまま相続を迎えてしまうと、大切な資産を子の代で減らしてしまったり、失ってしまったりしかねません。本記事では、清水家(仮名)の事例とともに、地主の相続における遺産分割の恐怖について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

絶交宣言

前回の面談の内容があまりにも弟の身勝手に終わっていたことから、こちらとしても話をするつもりはなく一度も口を利くことはなかったが、渋々連絡を取り面談を行った。

 

今回は世間話をするつもりもなく、早速遺産分割協議書を提示した。案とはいえ、こちらとしても譲れない点があることから事前に自分の箇所には実印を押しておいた。

 

写しを弟に手渡し、内容について簡潔に説明した。合わせて、金融資産についてはすべて弟に譲る代わりにこちらとしても老後のために貯めてきた手元資金(そのうちの多くは銀行退職時の退職金)をすべて納税資金として支出する覚悟をしていることも申し添えた。

 

しかし、弟からの反応は想定外のものであった。「こんな内容で飲めるわけがないだろう。前回の打合せ時において半分ずつと伝えたはずだ。このようなふざけた内容を提示されるのであれば、来るのではなかった。はっきり言って時間を無駄にしたよ。ここで話をしても溝は埋まらないから、こちらで遺産分割協議書を作成して郵送するのでハンコを押して送り返してくれ」と言い残し、遺産分割協議書の原本を手にして立ち去った。

弟作成の身勝手な遺産分割協議書

あれから2ヵ月ほど経過した。弟から書留にて遺産分割協議書が到達した。内容を確認すると骨子として、「自宅(実家)については兄、金融資産は弟、それ以外の不動産についてはすべて共有」とされていた。

 

また、自宅については不動産鑑定評価書(同封されていた)に基づき計算し、金融資産と概ね同額であると判断したと補足されていた。納税期限もあることから、早めに捺印のうえ返送して欲しいとメモ書きがあり返信用の封筒も同封されていた。

 

その後旧知の専門家にも相談したが、おおむね法定相続どおりの配分であり調停に進んでも解決は難しそうであること、共有を解消するためにそれぞれの不動産を評価したうえでわけたところでも、完全に平等とすることは難しいことなどがわかった。

 

また、いまから弟と交渉を続けても長期化することが目に見えており、納税期限も迫ってきていることから一旦弟の作成した遺産分割協議書に応諾して、後日解決を図っていくこととした。
 

 

 

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