争族の火種となった“論理的な大地主の80代父の遺志”…「1億円の相続税」のため、自身の老後資金で身を削る兄 vs. 感情論でキレた弟からの「地味に“効く”嫌がらせ」【元メガ・大手地銀の銀行員が助言】

争族の火種となった“論理的な大地主の80代父の遺志”…「1億円の相続税」のため、自身の老後資金で身を削る兄 vs. 感情論でキレた弟からの「地味に“効く”嫌がらせ」【元メガ・大手地銀の銀行員が助言】
(※画像はイメージです/PIXTA)

代々の不動産を守り継ぐ地主の相続。特に、継承する子が複数いる場合の相続対策は、遺産分割に向けた入念な準備が肝要です。準備が不十分なまま相続を迎えてしまうと、大切な資産を子の代で減らしてしまったり、失ってしまったりしかねません。本記事では、清水家(仮名)の事例とともに、地主の相続における遺産分割の恐怖について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

父との話し合いのメモを破り捨てる弟

四十九日の法要から1週間後のとある休日。弟から話があるので、これから少し時間を設けてくれないかとの要請があった。こちらとしても、父親の準確定申告(相続から4ヵ月以内)までは多少時間があることから、この間に遺産分割協議について最初の話し合いを持とうと考えていたため好都合であった。父親の遺志については実家に戻ってから何度から聞いていたし、その都度メモを残していたのでその内容を伝えるつもりであった。

 

弟と2人きりで話し合いを設けた。最初は世間話でもするつもりであったが、弟から開口一番「親父の資産は兄貴と均等にもらい受けたい。当然、俺には法定相続分を引き継ぐ権利があるし、その点を譲歩するつもりは一切ない」との発言があった。こちらとしても、父の遺志を蔑ろにできないことから、いままで父と打合せをしてきたメモを開示した。

 

弟は軽く目を通すと「こんなものは兄貴が勝手に作っているだけだろ。俺は親父からそのような話は聞いていないし、もし客観的かつ法的な効果を有するものを示せるのであれば、多少は考えなくもないが、このようないい加減な紙は見せられても困る」とメモを破り捨てた。

 

次の面談のときには、こちらの意向を反映した分割案を示してほしいと一方的に言い捨て、足早にその場を後にした。

代々の資産は減らしたくない

相続税の申告の準備を進めるためにも、税理士に依頼を行い資産の整理を開始した。一旦資産の整理がついたところで、配分案の検討に入った。

 

まずは、父の意向どおりの内容で作成してみた。当然、半々にはならず、金融資産をすべて弟に相続させることで検討した。それでも7:3ほどであり弟のほうが少なくなっている。納税資金については自分の貯金と、銀行から新たに借入することで賄おうと算段した。父からの強い思いも感じていたため清水家の代々からの資産については、できるだけ売却など手をつけたくなかった。

 

金融資産については譲歩のスタンスも示すつもりであるし、弟も話せば決してわからないはずはないと信じて次回の面談を申し入れることとした。この時点で、すでに父の相続からは半年が経過していた。

 

 

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