日銀による国債買い入れが過去最大に
日本の借金の問題は、「アベノミクス」が絡んでさらに複雑化しています。
日銀の前総裁であった黒田東彦氏は、アベノミクスの下で2013年に〝異次元金融緩和〟を開始し、巨額の国債買い入れを続けてきました。2023年6月末時点で国債の約54%を日銀が保有している状況ですが、これは他国では類を見ない事態です。
通常、国債を発行するときには貸し手となる金融機関や投資家を募る必要がありますが、政府は日銀に国債を買わせることで、大規模な借金を重ねられる構造となっています。
この流れはコロナ禍でさらに加速し、2020年4月27日に「新型感染症対策の影響を踏まえた金融緩和」として追加の緩和が行われました。
これまでは日銀の国債買い入れは年間80兆円が事実上の上限とされていましたが、今後は無制限に買い入れることが決定されました。
その結果、日銀による国債保有残高は2023年3月末時点で1,080兆円まで膨れ上がり、日銀が保有する資産に占める国債の割合は53 .3%と過去最大になったのです([図表2])。
日本の国債の大半は、日銀や国内の民間銀行に買われています。そのため、「日本の国債は日本人からの借金なので問題ない」と危機感を持たないエコノミストは少なくありません。たしかに、国債の外国人保有率が70%に上り、国債金利が上昇を続けた末に財政破綻を起こしてしまったギリシャと日本を比べれば状況は違います。
本来、「政府の債務残高が増えれば、国債金利は上昇する」というのが経済学の常識です。財政赤字が拡大し債務残高が積み重なれば、デフォルト(破綻)への懸念から市場の信任が失われます。
そのままの金利では国債を買ってもらうことができないため、金利を上げざるを得ませんが、金利を上げるとやがて返済ができなくなります。これがギリシャで起きていたことです。
日本も、国債の残高だけを見れば、ギリシャのような事態になってもおかしくはないはずですが、国債の多くが「国内の金融機関」によって保有されているため、「金利を上げよ」という強い圧力にならず、金利を上げずに済んでいます。
それでも、海外からの評価は辛辣(しんらつ)です。日本国債は海外の格付け機関による評価を落とし続けています。ムーディーズによる2019年11月の格付けでは、日本は「A1」となりましたが、同じランクに位置づけられているのは中国とチリです。
1990年代には最高の評価である「Aaa」をつけていたにもかかわらず、そこから9回にわたる見直しにより、今や新興国と同程度の格付けとなっています。
髙島一夫
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