日本の〝借金〟は壊滅的な規模
日本経済が抱える問題の深さは、膨大な政府債務として数字に表れています。この問題は1991年のバブル崩壊以降ずっと指摘されてきましたが、2020年からのコロナ禍を経て驚くほど深刻化しています。
もともと日本の政府予算は増加傾向にありましたが、2010年代は概ね100兆円程度で維持され、当初は予算に沿った財政運営がなされていました。
ところが、コロナ対策が始まった2020年度に歳出が一気に147.6兆円にアップし、その後も142.6兆円(2021年度)、139.2兆円(2022年度)と、まるでタガが外れたような状況で増えています。
2023年度の当初予算は114.4兆円となっていますが、実際の歳出はこれを大幅に上回ると考えられます。日本政府は財政規律を守っているようアピールするために当初予算を厳しめに編成しているのですが、その後に大きな補正予算を組んで歳出を増やすのが近年の傾向になっているからです([図表1])。
一方、政府の歳入の多くを占める税収については、増加傾向にあります。
2022年度の税収は、所得税、消費税、法人税のいずれも増加し、トータルで史上初の70兆円超えとなりました。この背景には、コロナ禍の反動による消費の増加や雇用環境の改善などがあると考えられます。
とはいえ、このように税収が増えていても、歳出の増加をすべて賄えるレベルではなく、財政赤字はさらに拡大しています。税収が過去最高となった2022年だけを見ても、政府は新たに50兆円規模の国債、つまり借金を増やしているのです。
今後も、ここまで膨れ上がった歳出を税収だけで賄えるはずがなく、日本政府は赤字国債を発行し続けていくでしょう。日本銀行(以下「日銀」)の統計によると、政府が2019年3月末に保有する金融負債は1,316兆円に上り、対GDP比で239%にまで達しています。これは国民1人当たりに換算すると、1,000万円に上る値です。
令和2年(2020年)度予算における国債の発行額は、「借換債」という、いわゆる隠れ借金まで含めると約153兆円あり、毎年のように140兆〜170兆円程度の借金が蓄積されています。このような状況にあっては、GDPが多少成長したとしても、焼け石に水です。
世界の先進国のなかで、これだけの借金を抱える国は他にありません。たとえば、ユーロ圏では、イタリアは財政破綻をしたギリシャに次いで多い債務を抱えているのですが、それでも対GDP比で138.4%です。
また、EU(欧州連合)に加盟するには、「債務残高が対GDP比で60%を超えないこと」という条件がありますが、この条件に照らしても、200%を超えている日本の債務残高は異常に高いことがわかります。
もちろん、「財政赤字は絶対に悪」というわけではありません。国の運営状況によっては、歳出を増やすことによって経済成長が加速することもあるでしょう。経済成長によりGDPが増加して、国の借金を無理なく返済できるのであれば、大きな問題にはなりません。
しかし、現在の日本は〝超〟がつくほど少子高齢化が加速しており、GDPはさらに低下する見込みのほうが高いわけですから、借金を前提とした財政運営は非常に危険です。
本来であれば、歳出を減らして将来の財源減少に備えておくのが合理的なのですが、政治的な事情もあり、政府は今後も大胆に歳出を減らす方向に舵を切れないと考えられます。
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