年収500万円「家賃20万円」のタワマンに住んでいたが
田中さん夫婦(仮名)は、首都圏近郊のとあるタワマンに暮らしていた。1LDK、家賃は管理費込みで月20万円。お互いに年収は500万円を超えており、いわゆる「パワーカップル」として生活に不自由はないとのこと。
賃貸で暮らしていた2人だったが、タワマン3年目にして同じマンションの別室を購入したという。
「結婚を機にタワマンで暮らし始めました。タワマン、良いですよ。騒音はないし、ご近所づきあいも楽。いつでもゴミ捨てられますし。エントランスから自宅までが遠いのが唯一の難点ってぐらいで、すごく満足しています。結婚して3年経って、お互いの生活も仕事も安定してきたので、購入を決めました」
「都内のタワマンに移り住む気はまったくありませんでした。そもそも高いってこともありますが、今は夫婦ともに完全にリモートワークなんで、都内に用事がないんですよね」
「後悔していることといえば……タワマンの良さがわかったから購入したももの、賃貸していた分のお金がムダだったなあ、とは感じています。3年で720万円ぐらいですか。本当に無意味なことをしたなあ。もっと早くに買っておけばよかった」
「賃貸はもったいない」と言い放ったものの…
「郊外のタワマンって、良いとこどりで最強です。今後もリモートワークは続きそうですし、資産価値は高いと思います」
タワマンと一括りにすれど、その形態は様々。およそ30平米、一人暮らし向けの部屋も珍しくなく、「ステータス」狙いで賃貸する若者が一定数いれば、田中さん夫婦のように思い切って購入する世帯も少なくない。
田中さんは「賃貸はもったいない」と言い放ったが、「持ち家」の危険性を指摘する声もある。
“賃貸住宅に住み、家賃を支払い続けることは、なにも「もったいない」という話ではない。家賃はあくまでも生活をするためのコストであるからだ。単身のときは、狭い部屋でもよいだろう。結婚して家族が増えれば少し大きな家に住めばよい、子供が卒業したら夫婦だけが暮らせる小さな家に借り換えればよいだけの話だ。子供なんかはすぐに大きくなるものだ。適当な時期で追い出せばよい。
こう考えれば、大博打である家の「購入」に拘らずに、生活するためのコストとして家賃を喜んで払うほうが、はるかにリスクの少ない生き方ができるというものだ。その割にきわめて多くの人が、いまだ家の購入という大博打を打っているようにしか私には見えない。”牧野知弘『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社)