金持ちには嫌われるべき理由がある
このような状況から、「金持ちを毛嫌いすることは間違いだ」と主張する金持ちがいるが、間違っている。
金持ちになった人は、「自分が金持ちになった本当の理由は、必死に努力し、他の人以上に社会貢献した結果ではなく、金持ちになるルートと土俵で仕事をしたからだ」と心の底では思っているはずである。
この世界、誰もがそれぞれの場所で努力しているものだ。金持ちと貧乏人は走っているトラックが違う。もっと言えば、そもそも行っている競技が違うのだ。
社会貢献度合いなんて大差ない。だから金持ちが偉いなんてちっとも思わなくてよい。にもかかわらず、金持ちは貧乏人に比べて、消費の機会と自由度に圧倒的な違いがある。その点に問題が出てくる。
金持ちが毛嫌いされるのはその稼ぎではなく、消費の不公平によるものである。人は金持ちが嫌いなのではなく、金持ちの「金の使い方」を嫌うのである。
「労働奴隷」から抜け出す人たちの出現
残念ながら、キャピタリズムにおける労働者の奴隷化は今後も止まる見込みがない。
たとえば現代における資源のほとんどは人件費である。人件費比率が圧倒的な割合を占めている。
やがて、その労働者の時間を預かって販売する時間卸売り業者が現れるだろう。企業は労働者を直接雇わずその時間を、業者を通じて買う。それは現在では派遣会社が行っているが、今後、より大規模に行われるだろう。人々の時間を集めて販売する「時間長者」が現れる日はそう遠くない。
現在の人口の半分は会社に属する労働奴隷であるが、わずかながらそこから抜け出そうとする人たちが出てきている。インディペンデントコントラクター(IC)の存在である。
彼らは自分たちで会社を創り、株を発行し、上場させるほど規模を追うことはないだろう。しかし、企業から案件を受託し、それを納品して収入を得るというやり方にとどまることもない。近い将来、まず自分の時間を株式のような形で発行し、あらかじめ収益を確保し、その株(のようなもの)を買った人に対して労働時間を提供する形になるだろう。
前払いかつオークション形式で、これまでの実績と信用に基づく労働収益を確保するようになるのである。このようにしてAIやロボティクスを作る側の人間や、一部のアーティストやアスリートなどの「特Aランク」に値する人材は、資本主義世界においてもある程度の頭角を現すことになるだろう。
山口 揚平
ブルー・マーリン・パートナーズ株式会社
代表取締役