JRA売得金の伸び率は鈍化
◆年初からの累計前年比は増加続くが、3月はもたついた展開
JRA売得金の23年前年比は+0.7%で12年連続増加になりました。緩やかながら景気拡張局面が続いていたことと整合的な数字になりました。景気が良く収入が伸び、懐具合が良い時は競馬の売得金も伸びるようです。平成・令和の34年間(平成元年・1989年~令和5年・2023年)での名目GDP前年比と売得金前年比の相関係数は0.71です。
24年のJRA売得金・年初からの累計前年比は3月31日時点で+1.7%と13年連続増加に向けプラス基調で推移しています。しかし、24年の各週の年初からの累計前年比をグラフにすると、3月はもたつきが感じられます。また、GⅠレースも今年3レース目の大阪杯が前年比▲10.3%と減少になってしまいました。
2023年自殺者数は上方修正、確報値で21,837人に
◆速報値から増加するも、前年比▲0.2%で2年ぶりの減少は維持
3月29日に2023年の自殺者数の確報値が公表されました。自殺者数は完全失業率と相関が高いデータです。21,837人と速報値の21,818人から19人増加となりました。最近のパッとしないデータのひとつと言えます。但し、前年比は縮小したものの、▲0.2%と2年ぶりの減少は維持できました。23年12月は速報値から13人増加し、前年同月比は▲1.5%から▲0.6%に減少率は縮小したものの、マイナスは維持され、24年2月までは4ヵ月連続減少のままになりました。悪化したもののそれなりの底堅さが感じられるデータです。
桜の開花が遅れるも、開花と満開の間隔は「平年並み」の予想
◆開花と満開の間隔は「長くない」ため、景気との関係については何とも言えない状況
東京の開花は3月29日になりました。満開は4月4日あるいは4月5日という予報のようです。
1953年から実施されている気象庁の生物観測調査で、東京の桜の開花が3月20日以前と早いと春物が売れることなどから、全て景気は拡張局面に当たります。しかし、開花が遅い今年は20日以前に当てはまりませんでした。但し、開花が遅いからと言って景気が良くないとは限りません。過去最も遅かった開花日は84年の4月11日で満開は17日でしたが、85年6月の景気の山まで景気拡張局面が続きました。
東京の桜の開花・満開日と景気局面の関係をみると、開花日が平年と同じか平年より早い年で、開花日から満開日までが11日以上だと景気後退局面ではないという関係があります。また、開花日から満開日までが11日以上だった11年すべてでみると、81年を除き10年で景気後退局面ではないという関係があります。桜の花を愛でる期間が長いと明るい気分になる人々も多いと思われます。今年は開花日から満開日までが平年並み、かつ開花から満開までの間も晴れの日が少なく、景気との関係でははっきりしたことは言えない状況です。
大谷翔平選手、開幕から8試合連続ノーアーチ
◆8戦ノーアーチと、2ヵ月連続悪化した景気動向指数の基調判断…共通点はもやもや感
国民の関心が大きいドジャースの大谷翔平選手が4月2日(日本時間3日)現在、自己ワーストを更新する開幕から8試合、37打席ノーアーチとなりました。昨シーズンの終わりまで遡ると、ノーアーチ記録は17試合に伸びています。もっともドジャースはナ・リーグ西地区単独首位立っています。44本塁打を放って本塁打王に輝いた昨季は14打席に1本の割合で本塁打が出ていたので、多くの大谷ファンにとってもやもやした状況が続いています。
JRA売得金、23年の自殺者数上方修正、寒の戻りでの桜の開花の遅れなどの身近なデータも、もやもやした状況だと言えそうです。
一部自動車会社の不正による生産停止の影響のせいで、1月景気動向指数の基調判断が「足踏み」に下方修正され、4月5日発表の2月分でさらに「下方への局面変化」になりそうなことも、もやもやした感じがします。
4月5日発表予定の2月景気動向指数・速報値・一致CIは前月差▲1.1程度と2ヵ月連続前月差マイナスが予測され、3ヵ月後方移動平均前月差、7ヵ月後方移動平均前月差も2ヵ月連続マイナスになりそうです。一方、先行CIは2ヵ月ぶりの上昇になり先行き、景気が上向くことを示唆するでしょう。
景気動向指数の景気の基調判断が、「足踏み」から事後的に判定される景気の山が、それ以前の数ヵ月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正されるためには、「7ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化1ヵ月、2ヵ月または3、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差(0.90)以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」であることが条件です。
2月の一致CIの前月差はマイナス。7ヵ月後方移動平均の前月差はマイナスが予測され、2ヵ月の累積で▲1.09程度で条件を満たしてしまいます。鉱工業生産指数は3月以降持ち直すことなどからさらなる景気判断の悪化は回避されるでしょうが、2ヵ月連続の判断下方修正が、企業経営者の先行きの不透明感を強めることにならないか懸念されます。
鉱工業生産指数は2ヵ月連続低下だったが…
◆4~6月期は、自動車生産関連の持ち直しで「前期比上昇」になる可能性
2月の鉱工業生産指数(速報値)前月比は▲0.1%と、1月の▲6.7%に続き、2ヵ月連続低下しました。2月も引き続き、一部自動車工場稼働停止などの影響から、全体として2ヵ月連続で低下しました。
先行きの鉱工業生産指数3月分を経済産業省の機械的な補正値前月比(+4.5%)で延長すると、1~3月期の前期比は▲4.8%の低下。4月分を製造工業予測指数前月比(+3.3%)で延長し、5・6月分を前月比横這いとすると、4~6月期の前期比は+6.3%の上昇になります。鉱工業生産指数は、1~3月期の前期比が低下するものの、4~6月期は自動車生産などの持ち直しで、前期比上昇になる可能性が大きそうです。
日銀短観3月調査・大企業・業況判断DI
◆「製造業は4期ぶり悪化、非製造業は8期連続改善」と明暗が分かれる
日銀短観3月調査では、大企業・製造業の業況判断DIは+11と不正のため稼働停止となった一部の自動車メーカーの影響などで関連業界の業況判断DIが悪化し、12月調査(調査対象企業の定例見直しによる新ベース)+13から2ポイント悪化しました。4期ぶりの悪化です。自動車の業況判断DIは12月調査から15ポイント悪化、鉄鋼が3ポイント悪化、非鉄金属が9ポイント悪化しました。
一方、大企業・非製造業の業況判断DIは+34と、12月調査の+32から2ポイント上昇し、8期連続の改善になりました。91年8月調査の+41以来の水準です。引き続きインバウンド需要を反映し3月調査でも宿泊・飲食サービスが+52と高水準でした。
日銀がある本石町の短観発表時点の天気と、日銀短観の内容が一致する傾向があります。4月1日の天気は発表時間には早朝の雨はあがったものの曇りでパッとしない状況でした。3月調査の全規模・全産業の業況判断DIが+12と12月調査の+13から1ポイントですが、4期ぶりの悪化したことと整合的でしょう。
大企業・製造業・業況判断DIは鉱工業生産指数と強い相関があります。21世紀に入った01年1~3月期から23年10~12月期までの期間で、大企業・製造業・業況判断DIは鉱工業生産指数との相関係数は0.634です。
しかし、鉱工業生産指数の4~6月期持ち直し見通しに反し、3月日銀短観で大企業・製造業・業況判断DIの6月見通しは+10と3月実績から1ポイント悪化が見込まれています。業況判断DIの悪化は3つの選択肢に中で「悪い」が増加しているわけでありません。「悪い」の割合は3月実績で10%でしたが6月見通しは6%で、4ポイント少なくなっています。「良い」も21%から16%に低下していますが、中間項目の「さほど良くない」が69%から78%へ大幅に増加していまする。企業経営者にとって先行きの不透明感が強いのでしょう。
日銀短観における慎重な判断結果からみて、景気動向指数の判断が2ヵ月連続下方修正になることが、企業経営者の先行きの不透明感を強めることにならないか懸念されます。
※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。