東京の桜、今年はかなり遅い開花に
~ただし、“3月20日以前の開花は拡大局面”のような「景気局面と明確な関係」はナシ
3月26日は、東京は冷たい雨で、寒の戻りとなりました。但し、厚手のコートが必要な日は今シーズンこれで最後とも言われています。東京の標本木である靖国神社の桜は、昨年は観測史上最も早い3月14日に開花し、22日には満開になっていました。今年は桜の開花がかなり遅れています。「日本気象協会」によると、3月19日時点の開花予想は3月24日でした。平年の開花日も24日です。テレビ報道によると26日に靖国神社の標本木を確認したところ、一輪だけ咲いたということですが、開花の目安である5~6輪には届かない状況です。
民間の気象予報会社「ウェザーマップ」は、3月25日に最新の開花予想を発表しました。東京の開花は3月27日、満開は4月5日との予想です。また、26日に別の気象予報会社「ウェザーニュース」のホームページ掲載された情報によると靖国神社の桜の開花は3月29日、満開は4月5日と予想されています。なお、平年の満開日は3月31日です。
1953年から実施されている気象庁の生物観測調査で、東京の桜の開花が3月20日以前と早い年は過去12回ありますが、コロナ禍の影響が出た2020年を除き、早く春が来ると春物が売れることなどから、全て景気は拡張局面に当たります。しかし、開花が遅い今年はこのケースには当てはまりませんでした。
東京の桜の開花日が3月27日~30日だったケースは過去11回ありますが、景気の局面との関係はまちまちです。開花が遅くなったからと言って景気が良くないとは限りません。過去最も遅かった開花日は1984年の4月11日で満開は17日でしたが、1985年6月の景気の山まで景気拡張局面が続きました。
2月「景気ウォッチャー調査」では先行き判断で7人がコメントし、「桜」関連・先行き判断DIは75.0と50の景気判断の分岐点を大きく上回りました。厳しい冬の期間が過ぎて桜の花を愛でると明るい気分になる人々も多いと思われます。お花見の宴会が自由にできる状況になったこともプラスに働くことと思われます。
寒の戻りで桜の開花が遅れていることは、一部自動車会社の不正により生産停止の影響で景気動向指数の基調判断が「足踏み」に下方修正されたことではっきりしない景気動向と似た動きのような感じがします。
1月景気動向指数は「改善」から「足踏み」へ下方修正
~改定値で一致CIが下落幅縮小したものの、「足踏み」の判断は変わらず
1月の鉱工業生産指数が一時的に大幅減少になった影響で、1月景気動向指数は速報値で「改善」から「足踏み」に下方修正されました。その後、年間補正により生産・出荷・在庫・在庫率指数の23年1月以降のデータ更新を受けて1月景気動向指数は改定値で、一致CIの前月差が▲3.8と速報値の▲5.8からマイナス幅縮小に、3ヵ月後方移動平均の前月差も▲1.90から▲1.20に縮小したものの、▲1.16を上回っていることに変わりはなく「足踏み」は変わりませんでした。
「改善」に戻るには、「原則として3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差の符号がプラス」になることが条件です。3ヵ月後方移動平均が2月に上昇するためには、2月の一致CIが前月差+2.9以上の大幅上昇になることが必要で、ハードルは高そうです。5月の一致CIが前月差プラスで、3月から5月にかけ3ヵ月以上連続して3ヵ月後方移動平均が上昇すれば、5月速報分が発表される7月5日に「改善」に戻ります。それまでは景気は「足踏み」で、もたついた感じは払拭できない可能性が大きそうです。
尊富士、110年ぶりの「新入幕優勝」!史上3人目の“4冠”達成
~「初日から11連勝」の最長記録も。“新記録が出たときの景気局面”を振り返ると…?
大相撲春場所千秋楽で、新入幕の東前頭17枚目・尊富士が西前頭6枚目の豪ノ山を破り13勝2敗になりました。14日目の朝乃山戦で右足を痛めたもののアクシデントを乗り越えて、初優勝を果たしました。新入幕での優勝は、大正3年(1914年)5月30日~6月8日に開催された夏場所で、9勝0敗1休(対戦相手が休場)の成績で優勝した東前頭14枚目・両国以来、110年ぶりの快挙です。また、初日から11連勝を果たしました。1場所15日制が定着した昭和24年(1949年)夏場所以降、新入幕の初日から11連勝は昭和35年(1960年)初場所の大鵬に並ぶ最長記録です。
新入幕で初優勝を果たした尊富士は、殊勲、敢闘、技能の三賞すべてを受賞しました。優勝と合わせた「4冠」を達成したのは、平成4年(1992年)初場所の貴花田と平成11年(1999年)名古屋場所の出島に次ぐ3人目の快挙です。
なお、過去の記録が出た場所の景気局面を調べてみると、大正3年夏場所と平成4年初場所は景気後退局面、昭和35年初場所と平成11年名古屋場所は景気拡張局面に当たります。はっきりとした関係がない状況で、景気判断が「足踏み」であることと整合的な記録であるようです。
大相撲春場所懸賞は「景気にそれなりの底堅さ」を感じる数字
~事前申し込みで1,717本、実際は1,629本。前年比+16.0%で4場所連続前年比増加
大相撲春場所は、横綱・照ノ富士と大関・貴景勝らが途中休場となったため、事前申し込みで1,717本あった懸賞は、実際は1,629本が懸かりました。前年比は+16.0%で、4場所連続前年比増加になりました。大阪で開催される春場所としては、平成31年(2019年)春場所1,938本以来の水準になりました。それなりに底堅さが感じられる数字です。
※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。