インバウンドの購入単価縮小…売上低迷の大手百貨店・免税売上高
「解放の日」と呼ぶ4月2日(日本時間3日)に、トランプ米大統領が表明した「相互関税」が世界経済に冷や水を浴びせるとの見方が、投資家心理を悪化させて一夜開けた米国株式市場は全面安の展開となりました。日経平均株価も3日・4日と大幅続落となっています。
トランプ関税が先行き不透明さを一段と高め、輸出産業をはじめとして日本経済に大打撃を与えることで、日本の景気の腰折れが懸念されています。これまで日本の景気をサポートしてきたインバウンド消費にも黄色信号が灯りはじめているようです。
日本経済新聞電子版が4月1日夜に配信した「百貨店4社、3月は全社減収訪日客の購入単価が縮小」という記事によると、インバウンドの購入単価が縮小し、免税の売上高が低迷したということです。高水準だった前年の反動に加え、為替の円高が響いたようです。
「大丸松坂屋百貨店は既存店売上高が1.2%減だった。3年7ヵ月ぶりに前年を下回った。免税売上高が前年比4.3%減と落ち込んだ」「高島屋は免税売上高が11.5%減と苦戦し、既存店売上高が0.8%減った。免税売上件数は約10%増だった一方、高級ブランドの免税売上高は約2割減だったという」という記述がありました。
3月大手百貨店4社の既存店売上高の前年同月比単純平均値は▲1.6%で、2月の+2.3%の増加から減少に転じました。3月全国百貨店売上高の前年同月比は2月の▲1.5%に続き2ヵ月連続の減少が予測されます。物価高による消費者の節約志向だけでなく、インバウンドの変調が加わると、厳しい状況になってしまいます。
インバウンドは高水準が常態化、DIは下向きの変動
「景気ウォッチャー調査」の「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは1月55.9、2月53.6と12月の60台から50台に低下。また、先行き判断DIは1月55.6、2月59.5で、こちらも12月の60台から50台に低下しました。
インバウンドのプラス効果はあるものの、だんだん常態化してきていることもあって高いDIは出にくくなっているようです。百貨店売上高の免税売上高の変調を先取りする動きのようでした。
それでも、「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは22年5月から景気判断の分岐点50超が維持されていて全体の現状判断DIを支える要因になっています。また、2月の現状判断のコメント数は、現状が98名と24年4月の113名以来の高水準になりました。
恵方巻の購入数が低下…節約志向のしわ寄せか
物価高騰下の節約志向のなか、恵方巻の購入が昨年に続き今年の節分でも鈍化。
季節の風習などで、特定の日に支出が多くなる品目があります。2月には、節分の日の「すし(弁当)」で、主に「恵方巻」が増える影響です。また、バレンタインデーの直前や当日の「チョコレート」もそうです。これらは、総務省「家計調査」では二人以上世帯の日次データで確認することができます。25年2月の「家計調査」は4月4日に公表されました。
近年、節分では豆まきのほかに、「恵方巻」を食べる風習も全国的なものとなっています。節分には、スーパーやデパート、コンビニなどで恵方巻きが売られ、多くの人が購入しています。家計調査の二人以上世帯のデータをみると、「恵方巻」が主だとみられる「すし(弁当)」は、2023年の節分の日には、1世帯当たり平均717円73銭が購入されました。
しかし、最近の食料品を中心とした物価高騰の影響から節約志向が強まっていて、節分の日の「すし(弁当)」の1世帯当たり平均購入額は、2024年は706円94銭、2025年は621円37銭と頭打ちになっています。
バレンタインチョコの購入金額の鈍化
同じ2月の風習として、バレンタインデーの2月14日にチョコレートを女性から男性へ贈ることが挙げられます。チョコレートを贈るのは日本独自の風習です。1936年2月12日付の英字新聞に掲載された、洋菓子メーカー・モロゾフ株式会社によるバレンタインの贈り物にチョコレートを勧めた広告が日本型バレンタインの先駆けの広告といわれています。
かつては職場で義理チョコなども多く配られましたが、コロナ禍の影響もあり、2019年に比べコロナの影響がほとんどなくなった2024年・2025年では2月13日あるいは14日のチョコレート購入が減少した感があります。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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