逆行 8割の貨幣が価値と逆行して進む
最後に「逆行」。実はこの2年でもっとも大きな変化は、「貨幣と価値は一致しない」ことの証明がなされたことである。たとえば「自動車の社会的費用」などである。
経済学者の宇沢弘文氏は30年以上前に著書『自動車の社会的費用』(岩波新書)で、こんなことを説いている。すなわち、自動車は一台あたり500万円で売っているけれども、社会的には一台あたり1,500万円のマイナスを生み出している、と。
このように、大抵の場合、利益とは、害を他者と社会に押しつけて生み出すものとして慣例化されており、そのことに皆が薄々気づいていたのである。
今は銀行の存在の社会悪や、逆に介護士の低い給料と高い社会価値の創造など、あらゆる仕事とビジネスの側面で、貨幣と価値が一致しないことが計算され始めている。
8割の貨幣は実は価値と「逆行」して進む。添加物、ギャンブル、無駄な作業と生産性のない上司の給料などである。これらは短期の利や快に応えても、時間軸や社会軸ではマイナス付加価値である。
価値と価格の矛盾は、実は矛盾なのではなく、「そもそも貨幣は社会価値に『逆行』しているのではないか?」と私たちは考え始めている。
そうなると価値を出してお金をもらうという大前提が成り立たなくなるので、頭が混乱するだろう。それでもお金はある程度必要で、貨幣経済は淡々と回り続ける。我々はお金に縛られ続ける。「稼ぐ(搾取。マイナス価値)」という行為と「仕事(貢献。プラス価値)」をくり返しながら……。
では、なぜこんなことになったのだろうか? 一体、私たちはどのようにお金とつき合ってゆけばいいのだろうか。
山口 揚平
ブルー・マーリン・パートナーズ株式会社
代表取締役