不動産価格や株価が4倍になっているのに〈牛丼の値段〉と〈給料〉が変わらないのはなぜ? お金を取り巻く世界の変化を読み解く3つのキーワード【山口揚平】

不動産価格や株価が4倍になっているのに〈牛丼の値段〉と〈給料〉が変わらないのはなぜ? お金を取り巻く世界の変化を読み解く3つのキーワード【山口揚平】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「なぜIT長者は一夜で巨万の富を手に入れられるのか?」「なぜイーロン・マスクは、Twitter社を6.4兆円で買収したのか?」など、ニュースを見ていて疑問に思うことはあってもその回答について明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか? 思想家で投資家の山口揚平氏は著書『3つの世界 キャピタリズム、ヴァーチャリズム、シェアリズムで賢く生き抜くための生存戦略』(プレジデント社)の中で、世界は単一なあり方から急速に複雑に分化し、「キャピタリズム」(資本主義社会)、「ヴァーチャリズム」(仮想現実社会)、「シェアリズム」(共和主義社会)という3つの世界へ分化することを論じ、それらの世界のメカニズムを理解することで冒頭の疑問が自然と解消されると述べています。本稿では同書の中から「お金を取り巻く世界の変化」について一部抜粋してお届けします。

逆行 8割の貨幣が価値と逆行して進む

最後に「逆行」。実はこの2年でもっとも大きな変化は、「貨幣と価値は一致しない」ことの証明がなされたことである。たとえば「自動車の社会的費用」などである。

 

経済学者の宇沢弘文氏は30年以上前に著書『自動車の社会的費用』(岩波新書)で、こんなことを説いている。すなわち、自動車は一台あたり500万円で売っているけれども、社会的には一台あたり1,500万円のマイナスを生み出している、と。

 

このように、大抵の場合、利益とは、害を他者と社会に押しつけて生み出すものとして慣例化されており、そのことに皆が薄々気づいていたのである。

 

今は銀行の存在の社会悪や、逆に介護士の低い給料と高い社会価値の創造など、あらゆる仕事とビジネスの側面で、貨幣と価値が一致しないことが計算され始めている。

 

8割の貨幣は実は価値と「逆行」して進む。添加物、ギャンブル、無駄な作業と生産性のない上司の給料などである。これらは短期の利や快に応えても、時間軸や社会軸ではマイナス付加価値である。

 

価値と価格の矛盾は、実は矛盾なのではなく、「そもそも貨幣は社会価値に『逆行』しているのではないか?」と私たちは考え始めている。

 

そうなると価値を出してお金をもらうという大前提が成り立たなくなるので、頭が混乱するだろう。それでもお金はある程度必要で、貨幣経済は淡々と回り続ける。我々はお金に縛られ続ける。「稼ぐ(搾取。マイナス価値)」という行為と「仕事(貢献。プラス価値)」をくり返しながら……。

 

では、なぜこんなことになったのだろうか? 一体、私たちはどのようにお金とつき合ってゆけばいいのだろうか。

 

 

山口 揚平

ブルー・マーリン・パートナーズ株式会社

代表取締役

※本連載は、山口揚平氏による著書『3つの世界 キャピタリズム、ヴァーチャリズム、で賢く生き抜くための生存戦略』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

3つの世界 

3つの世界 

プレジデント社

「3つの世界」は、現代社会が抱える複雑な問題とそれに対する三つの異なる世界観―資本主義社会(キャピタリズム)、仮想現実社会(ヴァーチャリズム)、共和主義社会(シェアリズム)―を解説しています。 序章では、IT長…

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