(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2024年3月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

3.金融政策

<現状>

●FRBは、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(フェデラルファンド(FF)金利5.25〜5.50%)を5会合連続で据え置きました。経済見通しでは年内3回としていた利下げ予想を維持しました。パウエル議長は会見で、量的引き締め(QT)のペースの減速を示唆しました。

 

●ECBは3月の理事会で、4会合連続で政策金利(預金ファシリティ金利4.00%など)の据え置きを決めました。あわせて公表された物価見通しは、前回予測から24年、25年とも下方修正されました。ただし、ラガルド総裁は記者会見で、「利下げの議論は今回しなかった」と述べました。

 

●日銀は3月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を大きく修正しました。マイナス金利政策の解除に加え、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ終了などを決めました。

 

<見通し>

●FRBは、インフレ動向をにらみながら、当面現状の政策金利を維持するとみられます。今後は、インフレの鈍化傾向に伴う実質金利上昇を回避するため、24年7月に利下げを開始し、年内の利下げ回数(1回=0.25%)は2回になると想定しています。

 

●ECBは、高止まりしているコアインフレを抑制するため、現状の政策金利を当面据え置くと予想しています。欧州景気が停滞していることから、ECBは24年6月に利下げに転じ、以降四半期ごとに0.25%の利下げを行うとみています。

 

●日銀は、景気が力強さを欠いていることから、当面現状の金融政策を維持し、先行きの利上げはゆっくりとしたペースで実施するとみています。政策金利(無担保コール翌日物金利0.0〜0.1%)は、25年の4月、10月にそれぞれ0.25%の引き上げを想定しています。

 

各国・地域の政策金利の推移

4.債券

<現状>

●米国の10年国債利回り(長期金利)は、物価指標がインフレ圧力の根強さを示したものの、FRBが公表した政策金利見通しやパウエルFRB議長のハト派発言を受け、FRBが6月にも利下げを開始するとの観測から小幅に低下しました。

 

●ドイツの長期金利は、ECBが経済予測で24〜25年のインフレ率見通しを引き下げたことや米長期金利が低下したことなどから低下しました。

 

●日本の長期金利は、日銀が3月の金融政策決定会合で大規模緩和政策の撤廃を決めたことを受け、小幅に上昇しました。

 

●米国の投資適格社債については、投資家のリスク選好姿勢の強まりで社債スプレッド(国債と社債の利回り差)が縮小しました。

 

<見通し>

●米国の長期金利は、FRBが先行き利下げに転じるとみられることから、緩やかに低下する展開を予想します。市場は利下げを一定程度織り込んでいるとみられるため、当面はもみ合うものの、景気減速とインフレの低下に伴い、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。

 

●欧州の長期金利も、ECBが利下げに転じるとみられるため、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。

 

●日本の長期金利は、日銀による利上げペースは緩やかとみられるものの、先行きの利上げが意識され、小幅ながら上昇すると予想します。

 

主要国の10年国債利回りの推移

 

米国投資適格社債の利回り、スプレッドの推移

 

次ページ5.企業業績と株式

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