「ある人から聞いた」はNG
前述の事例からは「私を認めてほしい」という承認欲求、「あの人のほうが大事にされている」という嫉妬心も伺えます。女性は人間関係に敏感な人が多く、これも女性部下が抱きやすい感情です。そのため、なにかを注意するときも言い方に気を付ける必要があります。
1つ、教訓となった経験があります。
ある女性メンバーについて「彼女は最近、休憩に出たままオフィスに帰って来ません」と同僚女性より報告がありました。その後、本人と面談する機会があり、「ある人から、こんなことを聞きましたが?」と事実確認しようとすると、プルプルと肩を震わせて怒り始めたのです。
「誰がそんなことを言ったんですか? きっと〇〇さんですよね!」
犯人捜しを始め、しまいには怒り泣きをしてしまいました。
彼女が同僚をライバル視していることを知らず、「ある人から聞いた」と特定の人物をイメージさせる言葉を使ってしまったことで、自分を嫌っている同僚が告げ口をした、筆者はその人の肩を持っている、と思ったようです。
結果的に事実としては、彼女はオフィスで煮詰まったときに外の空気を吸いに行っただけで、時間も適切な範囲でした。筆者としてはその事実さえ確認できれば、「気分転換は必要ですよね」の一言で終わるつもりでしたので、予想外の展開でした。
女性は感情と事実を切り離すことが苦手と言われ、事実よりも「悲しい」「あの人に言われたくない」「あの人がかわいそう」と感情が先に出てしまう人が多い傾向にあります。これは職場でお互いの感情を共有し、円滑な人間関係をつくれる強みでもありますが、配慮しないと地雷を踏むことにもつながります。
1対1の対話を重視し、「見ている」ことを伝える
このように、いくつもの驚きや失敗を経験し、女性メンバーの育成に悩んでいたとき、バレーボールの全日本女子代表監督であった眞鍋政義氏が選手とはチームミーティングよりも1対1の対話を重視していると知り、真似してみました。
部下と定期的に1対1の面談を入れ、毎朝、1人ひとりに明るく「おはようございます」と目を見て挨拶し、毎夕、1人ひとりのいいところを見つけて声をかけました。声をかける前には会社のチャットやメールで情報収集し、その人の前向きな行動や小さな成果など褒めたいポイントをメモしておきます。
根気よくこれを続けた結果、自信を失っていたメンバーも、感情的になっていたメンバーも人が変わったように前向きになり、大変な活躍を見せました。上司の声掛け次第で人がこれほど変化するのかと、驚かされた経験でした。
試行錯誤した筆者が感じる女性活躍の秘訣は、上司が「あなたのことを見ていますよ」というメッセージを送り続けることだと思っています。部下が「私は大切にされている」という感覚を持つことができれば、職場環境は必ず改善していくでしょう。
樋田 かおり
株式会社トークナビ
代表取締役/アナウンサー
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