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【“プロ”に聞く!ベトナム経済】
景気回復局面に入ったベトナム経済。適度なインフレで名目GDP成長率に持続性を見込む
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輸出モメンタムは上向き
●1~2月(年初来)のベトナム主要経済指標が出揃いました。ベトナムではテト(旧正月)の影響で1月、2月の前年同月比が大幅に変動するため、同時期の経済指標は1~2月の平均値(年初来の前年同期比)で判断することが有効です。1~2月の小売売上高の前年同期比は+8.1%と、2023年10-12月期の同+8.8%から鈍化しました。一方、1~2月の米ドル建て輸出は同+19.2%と、2023年10-12月期の同+6.9%から加速しました。ベトナムの財輸出はGDPとほぼ同規模であり、輸出の上振れが続く状況は景気を押し上げやすいといえます。実際、鉱工業生産は同+5.7%と、2023年10-12月期の同+5.3%からやや加速しました。
中国などアジアの企業がベトナムに進出
●2023年のベトナムへの直接投資の国別動向を見ると、中国(香港を含む)を筆頭に、日本、シンガポールなどアジア企業が圧倒的に多いことがわかります。アジア企業は、生産拠点や消費市場などの魅力からベトナムへ本格的に進出したと思われます。もともとこれらアジア企業の輸出の一部がベトナム経由の輸出に振り替わったと考えるならば、世界景気と比較するとベトナムの輸出は強めに出てくる可能性があります。この点は、ベトナムの経常収支の黒字傾向に寄与しやすいと考えられます。
適度なインフレが続く見込み
●1~2月の消費者物価上昇率は前年同期比+3.7%と、2023年10-12月期の同+3.5%から大きくは変わらず、安定的に推移しています。ベトナムには旺盛な直接投資の流入が続いており、投資を通じた生産性の上昇を通じて、単位労働コスト(名目賃金÷生産性)が抑制されていると考えられます。そのため、ベトナムでは名目賃金が上昇しても異常に高いインフレが発生する可能性は低いとみられます。一方、若年層を中心に人口が増加している局面で需要が比較的強いため、供給に対する需要の比率(需給ギャップ)は適度に引き締まった状態が続きやすく、デフレに向かう可能性も小さいと思われます。このように、上振れ・下振れが適度に抑制されたインフレが続くことは、名目GDPの成長が持続しやすい状況とみられます。こうしたマクロ環境は株式市場にプラスに作用すると思われます。
(2024年3月22日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ベトナム、適度なインフレで名目GDP成長率に持続性を見込む【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。