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インド<金融市場動向>
⇒株式は底堅い動き、金利はもみ合い、ルピー安リスクに留意。
【株式市場】
◆10-12月期決算はおおむね市場の事前予想通り
インド株式市場の上昇率は、インド準備銀行がタカ派的な政策スタンスを維持したことなどもあり、相対的に小幅となった。23年10-12月期の主要企業決算は、一部金融機関や素材関連企業を除きおおむね市場の事前予想通りだった。2月に海外投資家は小幅に買い越し。引き続き、インドは安定的な経済成長が期待できることや、地政学リスクが限定的であることなどから相対的に底堅い値動きになると想定。
【債券(国債)市場】
◆債券利回りはもみ合い
これまで実施された利上げによる今後のインフレ見通しや景気実態に対する効果や影響を見極める動きが続くとみる。財政政策にサポートされ堅調な景気状況が継続しやすいが、利下げ実施が視野に入っていくことで、インド国債利回りはもみ合いながら緩やかに低下余地を探る展開を想定する。
【為替市場】
◆ルピー安リスクに留意
米国の利下げ観測が浮上している状況では、ルピーの対米ドルレートは上昇しやすくなろう。ただし、米国景気が引き続き堅調な内容であったことから短期的には米ドル上昇リスクに留意したい。一方、日本が金融引き締めに転じるとしても長期化しないとの前提に立てば対円での下落リスクは限定的だろう。
インド<マクロ経済動向・政策>
⇒景気堅調が続く。
◆総合PMIは引き続き50超え
2月の総合PMIは60.6と、50超えの高水準となった。景気センチメントは明確に改善傾向を示している。製造業PMIは1月の56.5から2月には56.9へ上昇し、引き続き50を超えている。サービス業PMIは1月の61.8から2月には60.6へ低下したものの、消費センチメントは高水準だ。インドでは2024年前半に総選挙が開催される可能性が高く、選挙活動は消費センチメントにプラスに作用するだろう。当面、景気堅調を見込む。
◆成長率はいったん鈍化へ
10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+8.4%と、市場予想を大幅に上回り、7-9月期の同+8.1%から加速した。一方、産業別の実質粗付加価値(GVA)の成長率は7-9月期の同+7.7%から10-12月期には同+6.5%へ鈍化した。また、政府の2023/24年度の成長率試算から逆算すると、2024年1-3月期には、実質GDP成長率は同+5.9%、実質GVA成長率は同+5.4%へ鈍化することになる。実質GDP成長率には誤差脱漏の寄与度が比較的に大きいことも考慮すれば、10-12月期の実質GDP成長率を過大評価すべきではない。一方で、実質GVA成長率の鈍化傾向を考慮すれば、インド準備銀行の利下げは視野に入っていると判断して良さそうだ。
◆インフレ率はすでに沈静化
1月の消費者物価上昇率は前年同月比+5.1%と、目標レンジに収まった。玉ねぎ価格が落ち着いているため家計の期待インフレ率の上振れリスクは限定的となり、金融政策スタンスは変わらないだろう。一方、期待インフレ率の上振れリスクがあるとすれば、原油価格の上昇だろう。中東情勢次第では原油価格の上昇は起こりうる。
ベトナム ←ピックアップマーケット
⇒株価は持ち直し、ドン安リスクに留意。
【株式市場】
◆新証券取引システム導入に進展
ベトナム国家銀行が企業の資金繰り支援のための優遇措置を延長する方針であると報じられたことなどが好感された。また、ホーチミン証券取引所が長期間にわたり準備を進めている新たな証券取引システムの導入に関し進展があったと表明したことも、市場の押し上げ要因となった。海外からベトナムへの直接投資関連では、中国の太陽光発電関連企業がクアンニン省で工場建設の許可を取得したことなどが報じられた。2月に海外投資家は売り越し。バリュエーションは割安であり、不動産市場における流動性が改善すれば回復が期待される。投資戦略としては、海外企業によるベトナム進出の恩恵が期待される銘柄、若い人口構成と所得増加の後押しがある消費関連銘柄、ツーリズム関連銘柄などを長期目線で有望視できそうだ。
【為替動向】
◆ドン安リスクに留意
米国の利下げ観測が浮上しているため、ドンの対米ドルレートには上昇余地があろう。3月に入って、海外投資家による株式売買が買い越しの兆しをみせていることからドンは安定に向かうと見込む。ただし、米国景気が引き続き堅調な内容であったため、短期的には米ドル上昇リスクに留意したい。
【マクロ経済動向】
◆輸出は明確に持ち直し
2月の製造業PMIは50.4と、引き続き50超えとなった。循環的な製造業サイクルは上向きである。テト(旧正月)の影響を考慮した1-2月の米ドル建て輸出は前年同期比+19.2%と、2023年12月の前年同月比+8.1%から加速した。1-2月の鉱工業生産、小売売上高の前年同期比は、2023年12月の前年同月比からやや鈍化したものの、ベトナムでは輸出がGDPとほぼ同規模と大きいため、輸出が持ち直せば、景気をけん引するだろう。景気が緩やかな回復局面に入ったという見方を維持する。
(2024年3月7日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「インド株」の上昇率は“相対的に小幅”ながらも、底堅い値動きになると想定 ~先月のアジア・マーケットを振り返る【解説:三井住友DSアセットマネジメント】』を参照)。