(※写真はイメージです/PIXTA)

国民年金保険料の納付金額は、65歳以降の年金受給額に反映します。ワケあって、国民年金保険料の「未納期間」があった65歳のAさんは2年前、65歳からの年金受給額を増やすために「追納」しようと年金事務所へ。しかし、職員から、「支払う必要はありません」と止められてしまいました。いったいなぜなのか、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが事例をもとに解説します。

早期退職→起業で貯蓄1,000万円…65歳でリタイアを考えるAさん

現在個人事業主のAさん(65歳)は、妻で専業主婦のBさん(65歳)と2人で、ある地方都市の分譲マンションに暮らしています。

 

Aさんは大学卒業後、大手の精密部品メーカーのC社に就職。業績が絶好調だったこともあり、40代で約1,000万円の給与をもらっていました。

 

Aさんが52歳のとき、C社で早期退職の募集がありました。ちょうど「別分野でも自分の能力を試してみたい」と思い始めていたAさんは、思い切って応募。C社を早期退職したAさんは、53歳~54歳の2年間は無職で過ごし、55歳から個人事業主として起業しました。

 

起業してから10年が経ち、65歳になったAさん。1,000万円ほどの貯蓄があるほか、夫婦あわせて月額24万円(Aさん17万円、妻7万円)受給しており、2人の子どももすでに独立。住宅ローンもすでに完済しています。「そろそろ引退してもいいんじゃないか」。Aさんは65歳で完全リタイアを考えています。

 

しかし、夫婦の周囲に話を聞くと、同じ年でも未だ働いている人が少なくありません。本当にいま仕事を辞めても今後の生活は大丈夫なのか心配になったAさんは、Bさんを連れて筆者のFP事務所に相談に訪れました。

日本の年金制度は「3階建て」

Aさんは筆者に、次のように話します。

 

老後の生活が心配で来ました。それと、2年前に年金事務所で、国民年金保険料の未納分を追納しようとしたら止められたことがあって……。いまだに年金制度がよく理解できておらず、まずはそこから説明していただけないでしょうか」。

 

そこで筆者は、はじめに日本の年金制度の概要について次のようにお話ししました。

 

日本の年金制度はいわゆる「3階建て」になっています。1階部分は「国民年金」です。すべての国民は20歳~60歳までの40年(480月間)、この国民年金に加入する義務があります。

 

加入者は3種類に分かれます。「第1号被保険者」は、主に自営業や無職、20歳以上の学生と第2・3号被保険者でない人で、国民年金保険料は自分で納めます。40年間保険料を納付すると、79万5,000円(月額6万6,250円)の老齢基礎年金が受給できます。

※ 令和5年度の額。なお、68歳以上(昭和31年4月1日以前生まれ)の方は79万2,600円(月額6万6,050円)。

 

「第2号被保険者」は会社員や公務員です。「国民年金」に上乗せした2階部分の「厚生年金」に加入します。「厚生年金」に加入すれば「国民年金」にも加入していることになり、保険料は給与から天引きされます。

 

また、受給額は、厚生年金に加入時の給与やボーナス(報酬額)と加入期間をもとに計算され、老齢基礎年金も併せた老齢厚生年金が受給できます。

 

「第3号被保険者」は、「第2号被保険者」の被扶養配偶者(20~60歳未満)です。主に専業主婦などで、第2被保険者の保険料で「国民年金」に加入した扱いになります。

 

この国民年金と厚生年金を「公的年金」といい、10年以上納付すれば、通常65歳から年金が受給できます。

 

なお、3階部分は、2階の厚生年金にさらに企業が上乗せする「企業年金」です。制度を導入している企業に勤めれば、退職した際に退職一時金が受給できたり、退職したあとに年金が受給できたりします。またこのほか、公務員にも「退職等年金給付」といった上乗せ制度があります。

 

 

次ページAさんが年金保険料を2年間支払っていなかった理由

※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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