(※写真はイメージです/PIXTA)

国民年金保険料の納付金額は、65歳以降の年金受給額に反映します。ワケあって、国民年金保険料の「未納期間」があった65歳のAさんは2年前、65歳からの年金受給額を増やすために「追納」しようと年金事務所へ。しかし、職員から、「支払う必要はありません」と止められてしまいました。いったいなぜなのか、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが事例をもとに解説します。

Aさんには年金保険料の「未納期間」があった

A夫婦の年金加入と受給歴は、以下のとおりです。

 

出所:筆者が作成
[図表1]A夫婦の年金加入歴 出所:筆者が作成

 

Aさんは、20歳~22歳の学生時代と53~54歳の無職期間、2度の国民年金保険料未納期間があると思っていました。ただ、Aさんが持参した「ねんきん定期便」を調べてみたところ、Aさんが未納だと思っていた20歳~22歳の学生時代は、親が支払っていてくれたようです。

 

Aさんが20歳になったのは1978年(昭和58年)のことです。当時の学生は、国民年金への加入が任意となっていました。しかし、平成3年(1991年)4月からは、学生か否かを問わずすべての20歳以上の国民が、国民年金保険料を納めることが義務づけられています。なお、平成12年(2000年)4月からは、一定の所得基準以下の学生は、申請すれば在学中の保険料納付が猶予される「学生納付特例制度」が実施されています。

 

加えて、Aさんは53歳と54歳の2年間、起業準備のため無職でした。いくら起業準備といえども、本来は第1号被保険者として国民年金保険料を納付しなくてはいけませんが、Aさんはこの期間の年金も未納となっています。

 

しかし、Aさんは「未納だったのには理由がある」といいます。聞けば、年金事務所へ、所定の書類とともに「失業等による特例免除」を申請していたそうです。

 

この特例免除の審査は、申請者・配偶者・世帯主の前年の所得を合計した「世帯収入」をもとに行われ、退職した人(Aさん)の前年所得は0円と計算されます。その結果、この2年間の保険料納付が全額免除されたそうです。

※ 失業等による特例免除の詳細は日本年金機構HP「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」を参照のこと。

 

55歳で起業してから60歳までは、毎月国民年金保険料を納付しました。

 

Aさんは、未納期間を作ってしまったことが大変気にかかっていたようです。

 

65歳からの年金受給額を増やすため追納を決めたAさんだったが…

62歳のころ、日本年金機構からAさんのもとに、「特別支給の老齢厚生年金」の申請書類が届きました。3ヵ月後、63歳になったAさんは、手続きをするために社会保険事務所に向かったそうです。

 

未納になっている保険料は、10年以内であれば遡って納める(追納できる)ことを知っていたAさんは、その際53歳から2年間全額免除になっている保険料を追納しようとしました。追納すれば、65歳からの年金受給額が増やせると思ったからです。

 

しかし、「職員さんが計算してくださったんですけど、『支払う必要ありません』って言うんですよ」とAさんは振り返ります。「未納期間があっても、“ほぼ満額”もらえるって言われて。まあ、理由は覚えていないんですが……」。

 

筆者はAさんからひととおり話を聞き、追納を止められた理由について次のように推測しました。

 

次ページ“支払う必要ありません”…職員が「追納」を止めたワケ

※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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