不動産についての明確化
不動産については、一団の土地として、または土地建物一体として、その効用を発揮することから、まとめられるものはセットとして採番することが重要である。
また、土地については、借地や底地、貸家建付地であったり、建物についても賃貸に供しているか否かで相続税評価の手法が変わることから「利用状況」を明記しておく。
不動産の価値を把握しておくという点では毎年請求のくる「固定資産税評価額」が利用できる。土地については固定資産税評価額の8/7(およそ1.14倍)が、概ねの相続税評価額であり、建物については「固定資産税評価額=相続税評価額」となることから、相続評価の概算として把握しておきたい。
金融機関から融資を受けて建物を建築する場合には、土地建物に抵当権等が設定される。また、銀行の担保評価が不足していればほかの不動産を共同担保に供することから「どの借り入れに対して、どの不動産を担保提供しているか」を明示することも大切である(図表4、右のハコ)。
たとえば、No.3の駐車場については、自宅建築時の借入で担保提供しており、かつ、その後建築したNo.4の建物の借入の際にも第二順位で抵当権を設定していることが窺える。さらには、「m2単価」を明示しておけば、どこの不動産の資産性が高いか判別しやすいし、建物についても構造と単価により大まかな築年数を窺い知ることができる。
当該図の項目のほかにも、借入にかかる情報や、各物件の収支にかかる情報なども追加していくと、より理解が深まりやすい表となるが本件では主要な項目に留めてシンプルにした。
上記のとおり不動産を整理することで概ねの課税評価額(図表4では約3.7億円)や負債の状況が把握可能であることから、後継者の資産把握の助けになるものと思われる。
次に、多くの地主さんが所有される底地についても触れたい。土地の賃貸借契約書は建物の賃貸借とは異なり、非常に個別性が強く、過去の関係性などもあり、各賃借人によって契約内容が大きく異なる。また、長期間の契約が一般的であることから、期間中に相続が発生し、それぞれの当事者が変わることもよくある。
したがって、たとえば図表5のように主要な契約内容と今後発生する更新時期について明確にすることで、更新漏れの防止や当事者間のバランス調整など後継者がしっかりと理解しておいてもらうことが重要である。
まとめ:資産の見える化の必要性
・資産ごとに整理のうえ相続人としっかり共有しておく
・金融資産については不要なものは解約するなどしてシンプルにしておく
・金融資産の具体的な額を明示すると、後継者のやる気に影響する可能性があることから必要最小限の情報に留めておく
・不動産については、その利用状況によって相続税評価額が異なることから、明確にして整理しておく
・土地の賃貸借契約は個別性が強く、かつ、期間が長期に亘ることから契約期間中に相続が発生することも含んで準備しておく
以上のポイントを押さえることが重要である。
*該当記事:あんなに苦労して借入したのに…アパートローンを「借りっぱなし」にした地主の末路【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
小俣 年穂
ティー・コンサル株式会社
代表取締役
<保有資格>
不動産鑑定士
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
宅地建物取引士
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