(※写真はイメージです/PIXTA)

公益財団法人生命保険文化センターによると、2025年には65歳以上の5.4人に1人が認知症になると予測されています。もし自身の親が認知症と診断された場合、子に降りかかってくるのは介護の問題でしょう。そして、介護と密接に関わってくるのがお金の問題です。本記事では、佐藤さん(仮名)の事例とともに、認知症の介護費用に纏わる問題についてFPの牧元拓也氏が解説します。

認知症で起こりうる問題「親の銀行口座が凍結」

本人に正常な判断能力がないと判断された場合は、銀行や証券会社が取引を制限する可能性があります。これは詐欺などの犯罪に巻き込まれるのを防ぐことが目的です。しかし当然ながら制限されてしまうと、自由にお金を引き出すことができなくなります。いわゆる死亡による口座凍結のようにすべての取引が制限されるわけではありませんが、入出金等には制限がかかる可能性が高いです。

 

高齢者に対しての金融機関の対応は、犯罪防止の観点からも年々強化されている傾向にあるため、日常の資金使途での利用に関しても影響がおよぶ可能性があります。

 

銀行に認知症になったことを伝えずに家族がキャッシュカードを管理して引き出すことも実際可能ですが、普段とは違う頻度や大きな金額を引き出した場合に銀行から確認が入ることもあります。

 

また、銀行に相談のうえで介護費用のために家族が引き出す際には、介護施設の請求書や本人との関係が確認できる戸籍謄本などを提出して、引き出せることもあります。ただし時限的な対応なので継続して対応してくれるかはわかりません。

 

また、証券会社などで運用商品を保有している場合、定期的に高齢者に対しての確認を証券会社が直接実施することがあります。資産運用の取引継続が難しいと判断された場合は取引ができなくなってしまいます。

 

介護費用を子が負担することに…

佐藤さんは、父の口座から取り急ぎ介護の一時費用として100万円程度賄おうと、一度銀行を訪れました。事情を話すと、窓口担当者から「残念ながら、お手続きできません」との回答が。

 

本人の預金で準備ができなかった場合は子供など親族が代わりに負担せざるを得なくなります。佐藤さんは父親のために仕方なく自分の預金から介護用品やヘルパー依頼の費用を工面しました。佐藤さんは現在60歳で、定年退職まで残り5年です。今後の老後生活のために貯めていたお金を父親の介護に使うことになってしまい、愕然としました。

 

介護の平均年数は約5年といわれていますが、認知症の発症のみで、ほかに病気もなく肉体的に健康であれば、介護期間は長期化することもあります。お金の負担もですが、時間も拘束されてしまうため、介護離職により収入が絶たれてしまう可能性もあります。


 

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