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「遊休資産の売却」で自社株買い→PBRは「上昇」

ケース2.現預金など「資産の売却」で自社株買いを行う場合(負債がゼロの場合)

2つめのケースとして、自社株買いを現預金やその他の資産の売却で実行する場合、企業の金融資産や実物資産は減少します。たとえば、銀行預金を自社株買いに充てる場合、その分の受取利息は減少しますから、企業が生み出す利益の「絶対額」は減少します。

 

しかし、「自社株買いのために手放す資産の収益率」(ROA=利益/総資産)は、「現在の保有資産全体の収益率」よりも低い(か、せいぜい同水準である)はずです。簡単にいえば、「遊休資産」が自社株買いに充てられるはずです。

 

逆に、「現在の保有資産全体の収益率」よりも収益率が高い資産を手放してしまえば、「残った保有資産全体の収益率」は低下しますから、そのような(≒自社の収益率を下げるような)自社株買いは実行されないはずです。

 

自社株買いによって、①企業が生み出す利益の「絶対額」が減少しても、また②株数も減る分、時価総額の「絶対額」が減少しても、「残った保有資産全体の収益率(ROA)」は以前よりも高まる(か、少なくとも以前と同水準)と考えられます。簡単にいえば、「体重は減るが、筋肉質になる」イメージです。

 

[図表3]がその数値例です。「利益」と「純資産」は同じ比率だけ減るため(ただし、「株数」はもっと大きく減るため)、「1株利益の上昇率」と「1株純資産の上昇率」は等しく、「1株利益の上昇率」=「株価の上昇率」ですから、「PBR=株価/1株純資産」は変わりません。

 

[図表3]PBR1倍割れ、かつ負債がないのときに、自社株買いを、元のROAと同水準のROAを持つ資産売却で実施する場合、1株利益も株価も1株純資産も同じ上昇率になるため、PBRは不変である。
[図表3]PBR1倍割れ、かつ負債がないのときに、自社株買いを、元のROAと同水準のROAを持つ資産売却で実施する場合、1株利益も株価も1株純資産も同じ上昇率になるため、PBRは不変である。

 

[図表3]の数値例では「自社株買い前のROAと同じ水準のROAを持つ資産の売却で、自社株買いを行う」場合を考えています。その場合、PBRは一定です。

 

実際には、合理的な経営者は「自社株買い前のROAよりも低いROAを持つ資産の売却で、自社株買いを行う」はずですから、遊休資産の売却による収益率の改善によって、自社株買い後のROAやROEは上昇することが期待されます。

 

したがって、PBR1倍割れのときでも、収益率が低い資産の売却で自社株買いを行えば、PBRは上昇します。

 

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