「会社人間」をやめるべき理由
定年後に孤独にならないためには、いわゆる「会社人間」であることをやめなければいけないと思います。昔からよく言われていることではありますが、会社に尽くしすぎるとろくなことになりません。それは、プライベートの人間関係が希薄になるから、という理由だけではありません。
例えば、最近の急激な物価上昇を受け、日本の大企業には賃上げの動きが出ています。一方、中小企業でその動きがなかなか見られないのは、ほとんどの大企業が下請けを買いたたいているからだと言えるでしょう。
こうした「大企業」と「下請け企業」の上下関係は、日本経済全体の効率化を阻むものとして批判されています。当然、その構造は、そこに勤める社員同士の関係をも縛るものです。会社の指示に従って、ただ下請けをたたいていれば、会社を辞めた後は「嫌われ者」になるだけでしょう。
もし、定年後に起業を目指すのであれば、社内で上司に媚を売ったりしている場合ではありません。遅くとも50歳を過ぎたら、「会社を使って人脈を作る」くらいのことを考えておくほうが得策のはずです。
下請けをたたいて会社を儲けさせたところで、その会社が定年後まで特別な計らいをしてくれるわけではありません。だけど、下請けの取引先にちょっとでも利益を還元できるように仕事ができれば、ひょっとしたらその会社に好条件で再就職できるなど、定年後にそれ以上のものが返ってくるかもしれないということです。
これまで会社内の人間関係を大事にしていたところから、「自分自身の将来のためには下請けと仲良くするほうがいい」と考え方を変えられるかどうかは、その後を大きく左右するでしょう。
営業職の場合、それまで会社の〝手先〞であったがために、取引先に嫌われていると自覚しているようなら、新たな取引先を見つけてこれまでとは違う営業スタイルを試してみるのも一手です。
終身雇用・年功序列で企業年金がたくさんもらえた時代と違い、会社が死ぬまで面倒を見てくれるわけではないのに、会社にそこまで尽くす意味があるのか。一度立ち止まって考えてみてはどうでしょうか。
和田 秀樹
精神科医
※本記事は『老化恐怖症』(小学館)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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