(※写真はイメージです/PIXTA)

長年連れ添った夫婦でも、まだ知らないことがあるかもしれません。場合によっては、後々思わぬ形で発覚し、配偶者を窮地に追いやる事態となるケースも……。本記事では、福田さん(仮名/67歳)の事例とともに身近な相続トラブルについて、FPの小川洋平氏が解説します。

真奈美さんの法定相続分

小百合さんの遺産分割の対象となる資産は、預金と投資信託、上場株式の評価額が約2,000万円、自宅の土地が2,500万円あり、そして小百合さんが保有していた分の自社株の30%分でした。

 

そして、驚いたことに自社株の評価額は相続税法上の評価額でも時価総額で2億円にもなり、業績も良好であるため、M&Aで取引すればさらに高値になるというような状況だったのです。

 

つまり、小百合さんはその30%を保有しているわけですから、少なくともそれだけで6,000万円もの価値になります。小百合さんの財産をまとめてみると概算として下記のようになります。

 

・金融資産:約2,000万円

・自宅建物、土地:約2,500万円

・自社株:約6,000万円

 

⇒総額:1億500万円

 

となり、相続財産の半分をとなると5,250万円を真奈美さんに渡す必要があります。

 

しかし、ここで問題となるのは自宅建物や土地を半分にわけるわけにはいきませんし、自社株も事業を承継するわけではない真奈美さんに渡すわけにもいきません。金融資産を全額渡したとしても2,000万円程度ですから、法定相続分には3,000万円ほどあります。

 

唯一、生命保険金の1,000万円だけは福田さんが受取人になっており、遺産分割の対象から除外されるため、福田さんは小百合さんの金融資産の分の2,000万円、生命保険金1,000万円の合計3,000万円を渡すことができます。

 

福田さんも弁護士に依頼し、この3,000万円で納得できないかと交渉を進めていました。しかし結局は、自身の保有する預金や金融資産のうち2,000万円を現金化し、合計5,000万円を真奈美さんに渡すことで決着することになったのでした。

義母の死により、さらに事態は大混乱…

こうした自身が保有する金融資産のほとんどを手離した福田さんでしたが、さらなる追い打ちが待っていました。

 

小百合さんが亡くなってから半年が経とうとするころ、小百合さんの母であるハルさん(仮名/92歳)が小百合さんに続くようにこの世を去りました。

 

ハルさんは福田さんの会社の株式を20%保有していました。ハルさんの法定相続人である小百合さんがすでに亡くなっているため、娘婿である福田さんはハルさんが亡くなったとしてもハルさんの遺産の法定相続人とはなりません。遺言もありませんので、財産は孫である真奈美さんに全額相続されるとのことでした。

 

そのため、またも自社株の20%、4000万円以上の評価となる自社株が真奈美さんに渡ってしまったのです。

 

福田さんは仕方なく退職金として準備していたお金を3,000万円と、金融機関から融資を受けてハルさんが保有していた株式を会社で買い取ることにしました。

 

こうして相続が原因となり、福田さんは自分の金融資産、そして退職金をも失ってしまったのでした。自身が保有している分の自社株を後継者に買い取ってもらえば現金に換えることはできますが、社員の立場ではそんな大金を支払える余力はなく、ほぼ無償に近い形で買い取ることになるでしょう。

 

こうして妻を失っただけでなく、金融資産も退職金も失ってしまったのでした。

 

「妻の死で年金収入も減ったうえに、頼りの貯金も退職金もなくなってしまいました……。もう老後破産です。わたしにはお金の不安なんて無縁のはずだったのに。まさか、こんなことになるなんて……」

 

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