●1897年以降の長期データを用い、米大統領選挙とダウ工業株30種平均のアノマリーを検証する。
●4年間の株価上昇確率は共和党より民主党大統領の方がやや高く、ともに3年目の確率が高い。
●大統領選と株価のアノマリーは存在するが必ずしもその通りにはならず、参考程度とした方が賢明。
1897年以降の長期データを用い、米大統領選挙とダウ工業株30種平均のアノマリーを検証する
今回のレポートでは、米大統領選挙とダウ工業株30種平均の「アノマリー」を検証します。アノマリーとは、理論的には説明のつかない経験則のことですが、実際に過去のデータを用いて、米大統領選挙とダウ平均に経験則的な動きがみられたのかを確認していきます。なお、検証期間は、ダウ平均の算出が1896年5月から開始されたため、マッキンリー大統領Ⅰ期(1年目の1897年)以降とします。
ただ、バイデン大統領はまだ4年目を終えていないため、アノマリーの検証期間はトランプ大統領(4年目の2020年)までとします。1897年以降の米大統領と出身政党、任期中の各年(1年目は大統領選挙の翌年、2年目は中間選挙の年、3年目は大統領選挙の前年、4年目は大統領選挙の年)および任期4年通年のダウ平均の騰落率を図表にまとめましたので、以下、詳しくみていきます。
4年間の株価上昇確率は共和党より民主党大統領の方がやや高く、ともに3年目の確率が高い
全31回のうち、共和党大統領は17回、民主党大統領は14回ありましたが、任期4年通年でみた場合、共和党大統領の上昇確率は70.6%、民主党大統領の上昇確率は78.6%となっています。したがって、大統領の4年の任期中にダウ平均が上昇する確率は、出身政党に関わらず70%超と高く、民主党大統領の方が共和党大統領よりもやや高い確率であるといえます。
次に、任期4年間における各年の株価動向を確認します。図表より、ダウ平均の上昇確率は、任期前半の2年(1年目と2年目)よりも、後半の2年(3年目と4年目)の方が高い傾向がうかがえます。特に任期3年目は、全31回のうち25回、ダウ平均が上昇しており、その確率は80.6%に達しています。これは、翌年の大統領選挙に向けた現職大統領の政策運営などを織り込むためとも考えられます。
大統領選と株価のアノマリーは存在するが必ずしもその通りにはならず、参考程度とした方が賢明
また、大統領選挙で大統領の出身政党が変わると、選挙の年と翌年で株価の騰落が逆転する、つまり、前大統領の4年目が上昇(下落)なら新大統領の1年目は下落(上昇)、という動きが多くみられます。マッキンリー大統領Ⅰ期からトランプ大統領までの全31回で、政党が変わったのは12回ありますが、このうち株価の騰落が逆転したのは9回で、確率は75.0%に達します。これは政策転換への期待や不安を反映したものと推測されます。
改めて現職のバイデン大統領のケースをみると、ダウ平均は1年目と3年目に上昇しましたが、2年目は下落しました。また、共和党のトランプ大統領の4年目にダウ平均は上昇しましたが、民主党のバイデン大統領が勝利した1年目も上昇しました。以上より、米大統領選挙とダウ工業株30種平均のアノマリーは存在するものの、株価は必ずしもアノマリー通りの動きにはならず、参考程度とした方が良いと思われます。
(2024年2月21日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『株価はどう動く?「大統領選」と「米国株」の経験則(アノマリー)【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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