●昨年、4月以降の日本株の上昇を主導したのは、欧州の投資家による日本株の大幅な買い越し。
●日本株売買シェアは昨年通年で欧州の76.4%が最大、次いでアジア、北米、その他地域の順に。
●過去10年で海外投資家の日本株売買代金は急増、欧州の寄与が大きいがアジアも存在感大。
昨年、4月以降の日本株の上昇を主導したのは、欧州の投資家による日本株の大幅な買い越し
日本取引所グループは、海外投資家の日本株売買状況について、「北米」、「欧州」、「アジア」、「その他地域」の4つの地域別に月間と年間のデータを公表しています。そこで今回のレポートでは、2023年の月間データを用いて、地域別に海外投資家の日本株売買状況を検証するとともに、年間データで2013年から2023年までの地域別売買状況の推移を振り返ります。
はじめに、2023年の月間データからみていきます。2023年は、東京証券取引所(以下、東証)が3月31日に資本コストや株価を意識した経営を企業に要請し、以降、企業の資本効率改善が進むとの期待から日本株が大きく上昇した経緯があります。図表1は海外投資家の月間売買代金差額を地域別に示したものですが、4月から6月にかけて大きく買い越し、日本株の上昇を主導したのは、欧州の投資家であることが分かります。
日本株売買シェアは昨年通年で欧州の76.4%が最大、次いでアジア、北米、その他地域の順に
欧州からの日本株買いの動きは7月以降に一服し、8月、9月、12月は売り越しに転じましたが、2023年の1年間では約2.6兆円の買い越しとなりました。海外投資家全体での年間売買代金差額は約3.2兆円の買い越しでしたので、欧州の買い越しが大半を占めています。なお、北米は約6,600億円の買い越し、アジアとその他地域は、それぞれ約54億円、約560億円の売り越しでした。
次に、地域別に2023年の年間売買代金総額と売買シェアを確認します。海外投資家全体の年間売買代金総額は約1,199兆円で、このうち欧州の売買代金総額は約917兆円、売買シェアは76.4%と最大を占めます。次がアジアで、総額は約194兆円、シェアは16.2%です。そして、北米が約85兆円でシェア7.1%、その他地域が約4兆円でシェア0.3%となっています。
過去10年で海外投資家の日本株売買代金は急増、欧州の寄与が大きいがアジアも存在感大
最後に2013年から2023年までの年間データを用い、地域別売買状況の推移を確認します。詳細は図表2の通りで、2013年から2023年の間、欧州が変わらず最大の売買シェアを占めていることが確認されます。近年は、欧州の売買シェアが70%台で安定的に推移するなか、アジアのシェアが緩やかに増加する一方、北米のシェアは緩やかな減少傾向がうかがえます。
海外投資家全体の年間売買代金総額は、2013年の約670兆円から2023年の約1,199兆円まで79.2%の大幅な増加となっています。この増加率の寄与度をみると、欧州が77.5%、アジアが19.6%、北米が-18.1%、その他地域が0.2%となっており、海外投資家のなかでは、特に欧州の投資家が積極的に日本株を売買しており、また、アジアの投資家も存在感が高まっていると判断されます。
(2024年2月20日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【日本株】昨年4月以降の「株価上昇」を主導したのは“欧州勢”…「海外投資家の日本株売買状況」を地域別に検証する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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