民間レポ市場に資金が流れなくなっている
2.「割引国債利回り」と「民間レポ金利」との金利差
もう1つの金利差=問題は、割引国債(Tビル)の利回りと民間レポ金利との差です。
[図表4]に示すとおり、データが取れるかぎりでみると、過去の長期間にわたって3ヵ月物割引国債(Tビル)の利回りは、民間レポ金利(翌日物)を下回ってきましたが、パンデミック後の利上げ開始以降は、Tビルの利回りのほうが高くなっています。
この金利差により、(レポの主要な出し手であり、銀行に代わって残された流動性を保有する)MMFは、民間レポでの運用(貸出)よりも割引債(Tビル)への投資を選好するインセンティブが高まっています。
前述のとおり、この金利差は長くみられなかったものであり、おそらくは多額の米国債発行(利付債と割引国債(Tビル)の発行)によって生じているものとみられます。
レポは、証券会社やヘッジファンドがさまざまな証券をポジションとして保有するための主要な手段であり、彼らが資本市場を支えていることをふまえると、資本市場で最も重要なツールです。
仮に、レポで調達した資金で購入される証券が米国債だけの場合には、「MMFが国債を買うか、レポで資金を調達した証券会社やヘッジファンドが国債を買うかの話」なので、どちらでも構いません。
しかしながら、証券会社やヘッジファンドは国債だけでなく、さまざまな証券をレポで買い付け・保有します。「多くの証券はレポによってファンディングされている」状況ですから、民間レポ市場に資金が流れなくなる状況は資本市場の根幹を揺るがす事態に発展しかねません。
おそらくは、米国債(いまでいえば、お金を持っているのはMMFであり、MMFが買うのは割引国債)の供給を減らすことで、米国債(同)の利回りを引き下げ、レポ金利との差をなくし、MMFによるレポでの資金運用を増やす必要があるでしょう。
そのためには、FRBが米国債を買い入れるオペレーション、すなわち量的金融緩和(QE)を再開させることが必要とみられます。
以下に考えます。