(※写真はイメージです/PIXTA)

都市部への人口集中と高齢化により、地方にある「実家」の“空き家化”が進む昨今。悩ましい問題ですが、「地方の実家を相続して処理に困った場合、唯一の対処法がある」と、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は言います。牧野氏の著書『負動産地獄 その相続は重荷です』より、詳しく見ていきましょう。

地方の実家を相続し、リフォームするも…

長野県の中核市にある実家を親から相続した姉妹。2人とも東京住まいで、実家といっても親の実家、彼女らからみて祖父母の家にあたります。夏休みには親に連れられて祖父母の家に滞在し、よく遊んでもらった思い出しかありません。

 

彼女らの両親は、祖父母が亡くなった後、この実家を年に何回か訪れて管理していましたが、特に何かに活用するようなことはしてきませんでした。姉妹からみれば、いちおう市街地内にある良い家なので、ほったらかしにせず、何か活用すればよいのにと常々思っていたそうです。

 

そこで相続後は姉妹で相談して、この実家をフルリニューアルすることにしました。家は古いものの内装を一新すれば、借りてくれる人はいるはず、と考えたわけです。リニューアルは楽しい作業です。自分たちで選んだちょっとおしゃれな壁紙を張り、撓んでいた床をフローリングの床に張り替え、玄関扉を一新。キッチンも最新のものに更新しました。

 

この時点で当初予算300万円を超えていましたが、1ヵ所がきれいになると、ほかの箇所の古さが目立つもの。和式トイレも交換。さらに風呂もユニットバスに更新しました。結局予算は大幅オーバーの600万円。でもこだわって、納得のリニューアルを施したので姉妹はおおいに満足。準備万端、満を持して地元不動産屋の扉を叩きました。

 

しかし姉妹を待っていたのは不動産屋のつれない返事でした。

 

「家族向けの賃貸ですか。この地域はみんな自分の家、持っているんでね。借りてくれる人なんかなかなかいませんよ」

 

家賃を月5万円くらいにすれば、借手が現れるかもしれないとも言われましたが、これではリニューアルに投じた費用を回収するだけで10年もかかることになります。それでは残念だけどいっそ売ってしまおうかと提案してみましたが、

 

「いやいや、築年相当古いですよね。そもそもこんな古い家を買う人いないよ。リニューアルしたといってもね。新築の家を安く買えるのにそんな人、いない、いない」

 

と取り合ってもらえません。姉妹は途方に暮れてしまい、最終的には、追加費用をかけるようにと作業を引っ張った姉と、もとは慎重派だった妹の間で大喧嘩になったということです。

 

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※本連載は、牧野知弘氏の書籍『負動産地獄 その相続は重荷です』(文藝春秋)より一部を抜粋・再編集したものです。

負動産地獄 その相続は重荷です

負動産地獄 その相続は重荷です

牧野 知弘

文藝春秋

資産を巡るバトルでも相続税対策でもない。 親が遺した「いらない不動産」に悩まされる新・相続問題が多発! 戦後三世代が経過していく中、不動産に対する価値観が激変。 これまでは相続財産の中でも価値が高いはずだった…

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