(※写真はイメージです/PIXTA)

団塊世代が「後期高齢者」の年齢となる2022年以降、日本各地で始まると予想される「相続ラッシュ」。とりわけ、「これからの家族の系譜で相続の問題は複雑化し、悩ましいものになっていく」と、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は言います。牧野氏の著書『負動産地獄 その相続は重荷です』より、その理由についてみていきましょう。

恐ろしい…首都圏でも確実に発生する「相続ラッシュ」

さてこのことを首都圏(1都3県)に的を絞って考えてみましょう(図表)。

 

出所:『負動産地獄 その相続は重荷です』(文藝春秋)より抜粋  各自治体HP等から作成
【図表】首都圏における高齢者の内訳 出所:『負動産地獄 その相続は重荷です』(文藝春秋)より抜粋 各自治体HP等から作成

 

首都圏における高齢者人口(65歳以上人口)は914万人、このうち478万人が75歳以上の後期高齢者です。団塊世代はまだ後期高齢者にはカウントされていません。この時点で首都圏に住む団塊世代は東京都で51万8,000人、神奈川県で39万2,000人、埼玉県で34万5,000人、千葉県で29万8,000人の計155万3,000人にのぼります。

 

首都圏でも例外なく相続ラッシュになることが容易に想像されます。団塊世代の多くは1980年代を中心にマイホームを首都圏の郊外部に取得しています。これらの家は一次相続時点では配偶者に無事引き継がれるでしょうが、二次相続になると、彼らの子供の多くが、果たして親の残した家に住むことを選択するでしょうか。

 

そして親の残していく財産の中でも、このマイホームが意外な厄介者になる可能性があるのです。

 

国内では初めて相続ラッシュの時代を迎えます。日本は戦争で多くの国民を失いました。戦後から平成にかけて亡くなった多くの人たちは戦争で苦労をし、廃墟の中から立ち上がってきた人たちです。人口ボリュームも小さく、また金融資産や不動産といった財産も少なかったのです。

 

団塊世代の方々でも親からたくさんの遺産を相続したという人は少なく、せいぜい地方の実家、付随した田畑や山林などでした。きょうだいも多いので資産は分散し、相続争いなどもごく一部のお金持ちの話に限られていました。

 

世代が代わり新たな問題となるのは、これから亡くなる方の多くが、ある程度の金融資産を持ち、マイホームを持っているということです。戦後3世代、あるいは4世代目に引き継がれていくこれからの家族の系譜で、相続の問題は複雑化し、悩ましいものになっていきます。

 

どうやら団塊世代が後期高齢者入りを果たす2022年以降は、相続激増の号砲が鳴り響く時代と言えそうです。

次ページ広い一軒家に一人…「マイホーム」を持て余す妻たち

※本連載は、牧野知弘氏の書籍『負動産地獄 その相続は重荷です』(文藝春秋)より一部を抜粋・再編集したものです。

負動産地獄 その相続は重荷です

負動産地獄 その相続は重荷です

牧野 知弘

文藝春秋

資産を巡るバトルでも相続税対策でもない。 親が遺した「いらない不動産」に悩まされる新・相続問題が多発! 戦後三世代が経過していく中、不動産に対する価値観が激変。 これまでは相続財産の中でも価値が高いはずだった…

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