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「売上を上げてきたのに、利益がほとんど変わらない。」「同じルールの下で同じ商売をしているのに、ものすごく儲かっている会社と倒産していく会社があるのはなぜか?」…このように考える中小企業の経営者やスタートアップの代表は多いでしょう。27才で売上高1億5千万円、自己資本比率15%の電気工事会社を父から引き継ぎ、その後、売上22億円、経常利益2億円、従業員240人の会社にまで成長させた株式会社九昭ホールディングス代表取締役・池上秀一氏の著書『資金繰りの不安がなくなり、自己資本比率が上がる! 付加価値額の教科書』(イースト・プレス)より、池上氏の経験に基づき導き出された経営メソッドを、一部抜粋して紹介します。

残業は原則ナシ。するなら2週間以内に振替をさせる

現在、一部の業界では「2024年問題」が話題になっています。

 

働き方改革によって医療業や建設業、物流業の時間外労働の上限規制が適用されることになり、例えば物流関係ではドライバーの労働時間に罰則つきで上限が設定されます。自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって「会社の売上・利益減少」「トラックドライバーの収入減少・離職」「荷主側における運賃上昇」といった問題が生じることが取り沙汰されています。

 

要するに、これからの会社はおいそれと社員に残業を強いることができなくなる、ということです。そんな変化する世の中で会社が生き残るためには、残業を「原則ナシ」とするほかありません。

 

もちろん、現実では残業が発生するものですが、そうであっても残業代を払うよりは、振替で休みを取れたり早く帰れたりするほうが付加価値額経営の考え方としてはマッチします。

 

付加価値額を上げても残業が多いのであれば、残業代が発生して人件費が上がり、利益を圧迫してしまうからです。

 

「残業は原則ナシで、してもいいけどするなら2週間以内に振替で休む(早く帰る) 」

 

を徹底していきましょう。これはトップダウンでするしかありません。2週間ルールにしているのはそれを超えると忘れてしまったり、その月の給与が確定してしまうからです。もちろん、それでも取れない場合は支払いますが、額を極力減らすためにルール化するのです。

 

私の会社でも完全に残業がなくなったわけではありませんが、昔に比べてかなり減っています。残業を原則ナシにルール化することで、社員がどうすれば早く帰れるか、どうやりくりすれば振替で休めるかを考えるようになったからです。

「残業が少ない人を評価すること」を全社で浸透させる

社員を評価する基準において「残業が少ない人を評価すること」とするのは効果的です。

 

先述の通り、残業が増えれば増えるほど付加価値額を圧迫します。ですから、そもそも残業をする社員は評価しない方向性を打ち出し、徹底的に話をして全社に浸透させるようにしましょう。

 

私の会社では就業時間が8時30分~17時30分なので、時には事務所を閉めて電気を消すことを徹底しています。

 

このようにすることで、社員は8時間の中でどう働くかを考えるようになります。これまでは途中でコーヒーを飲みに喫茶店に入ったり、必要以上に喫煙所で時間を潰したりしていたムダをしなくなり、自分から効率性アップ・生産性アップを考えるようになります。そしてこの徹底が、付加価値額経営につながっていくのです。

 

現在、日本ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)による仕事の効率化・生産性アップが強く言われています。

 

しかし、どれだけデジタルツールやITを導入したところで、それを使う人間側に意識があって行動に移さなければ意味がありません。DXの前にまずは意識改革です。

 

付加価値額経営の考え方を浸透させ、それが働き方にどう影響するのかを、制度やルール作りも踏まえて経営者は全社に浸透させなければいけません。これも社員教育の一環なのです。

 

 

(株)九昭ホールディングス代表取締役

池上 秀一

 

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池上秀一

イースト・プレス

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