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パンデミックがなければ、景気後退は避けられた

たしかに「翌2020年にパンデミックに伴う景気後退が訪れたじゃないか!?」という反論はそのとおりです。

 

しかしながら、[図表6]に示すとおり、主要な6つの購買担当者景気指数(PMI)や景気先行指数はいずれも2019年8月から12月のあいだに底打ちをしていました。

 

景況感回復の背景は、①利下げと、②利下げを始める「きっかけ」のひとつとなった米中貿易戦争が同年10月ころから12月にかけて終局したためと考えられます。筆者は「パンデミックがなければ景気後退は避けられた可能性がある」と考えています。

 

[図表6]ISM景気指数
[図表6]ISM景気指数

 

[図表7]マークイットPMI
[図表7]マークイットPMI

 

[図表8]米国の景気先行指数
[図表8]米国の景気先行指数

政府、企業、家計…みな「金融緩和」を欲している

いずれにせよ、レイ・ダリオが綿密な分析とpainfulな経験に基づいて警告するように、早期の金融緩和は経済の多くの主体を「救済」します。

 

通常でいえば、金融緩和によって、家計や企業が救済されます。

 

しかし、今回の場合には、これら2つの主体に加え、戦費調達で債務が膨らむ米政府、商業用不動産の投資家・オーナー、保有債券に含み損を抱える市中銀行、国債発行の増加やFRBのQT(量的引き締め;保有資産売却)で資金調達が苦しい一部の金融機関やヘッジファンド(→次週に書くつもりです)、事実上の債務超過であるFRB自身も救済されます。

 

いま現在は、ほとんどすべての主体が利下げを欲しているでしょうし、その分、今回の利下げは「いつもより大きな効き目」を持つ可能性があるかもしれません。

 

弱気派は金融緩和に要注意

話を戻すと、今回は、昨年7月が利上げの打ち止め、3会合後の12月に(利下げは実施されませんでしたが……)本年中の利下げ開始が示唆されました。別途、一部の短期金利に上昇圧力が生じており、QT停止も遠くなさそうです。

 

こうみてくると、今回は1994年や2019年のパターンに似ているのかもしれません。

 

自戒を込めて、弱気派は早期の金融緩和に要注意です。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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