「腹式呼吸ができているかどうか」は判断が難しい
ここまで見てきたように、順腹式呼吸、逆腹式呼吸は心身によい影響を与えてくれます。しかしながら、今まで特に意識をしていなかった人が実際に腹式呼吸を行おうとしたときに、ひとつ問題があります。それは、「本当に腹式呼吸ができているかどうか」自分ひとりでは判断が難しいという点です。
たとえば「腹式呼吸をどのように行いますか?」と聞くと、その人の呼吸が正しいかどうかを判断することができます。
「腹式呼吸といえば、息を吸うときにお腹を膨らませて、吐くときにお腹をへこませればよいのでしょう?」と答えるような人は残念ながら、腹式呼吸を正しく行えているとはいえません。
腹式呼吸といっても、いわゆる胃や腸などの「お腹」に空気を吸い込むわけではありません。「腹式呼吸」と「胸式呼吸」の差をひとことで説明すると「肺をどのように広げるか」という違いにあります。腹式呼吸は肺を縦に広げ、胸式呼吸は前向きの方向に肺を広げるイメージです。
また最大の違いは、「吐く息のコントロールがしやすいかどうか」という点にあります。胸式呼吸の場合は、コントロールできる筋肉が、腹式呼吸の場合に比べて非常に少なくなります。反対に、腹式呼吸の場合は多くの筋肉を使うことができます。
深い腹式呼吸ができる「うつぶせ」の体勢
腹式呼吸が正しく行えているかどうか、自身で確認する方法を紹介しましょう。それは、実際に床にうつぶせに寝て、腹式呼吸をしてみることです。そして「自分で正しいと思う腹式呼吸」を行ってみてください。詳しいやり方は次の通りです。
【うつぶせ寝で、腹式呼吸を確かめる方法】
①うつぶせに寝ます。
②手を横腹に軽く置きます。
③「自分で正しいと思う腹式呼吸」を行ってみます。
④背中と横腹が膨らむようであれば、腹式呼吸を正しく行っていることになります。
※自力で寝返りができない高齢の方などは、危険ですのでこの方法は行わないようにして
ください。
実際に、確かめてみてどうでしたでしょうか。うつぶせで寝ると胸が圧迫されるため、「呼吸がしにくいのでは?」と心配した人もいるかもしれません。けれども、実はうつぶせの姿勢をとることによって、胸を使った「胸式呼吸」が抑制されることになり、横隔膜が動き、より深い「腹式呼吸」ができるのです。
腹式呼吸を正しく行えているという自信が持てない人は、何度かうつぶせ寝の姿勢で腹式呼吸を繰り返してみてください。回を重ねるうちに、背中と横腹が膨らむ変化を感じるようになるはずです。