商品と投資金額、どうやって決めればいいの?
いよいよスタートした新NISA制度。これを機会に初めて投資デビューするという方も多いでしょう。しかしその一方で、どのような商品を選び、どれだけの金額を投資すればよいのかが悩みどころではないでしょうか。
現状では、テレビや雑誌、ウェブ媒体にもさまざまな情報があふれており、目移りしてしまいます。しかし筆者は、全世界株式を対象とするインデックス・ファンドをお勧めします。なぜなら、この商品で運用すれば、最も効率的にお金を増やすことができると考えるからです。
投資すべき金額は、投資される方の年代によって変わりますが、もし手元に余っている資金があるのなら、その全額を投資すればいいでしょう。毎月の収入の一部を投資にまわす場合は、無理のない金額を設定し、毎月同額をコツコツと投資し続けることをお勧めします。
注意していただきたいのが「投資初心者にありがちな失敗」です。しばしば見られるのが、「価格が下がったため、短期で売却してしまう」そして「価格が上がったため、短期売却してしまう」ことです。
損切りや利益確定を焦る気持ちもわかりますが、すぐに売却しては、長期分散投資による資産形成は望めないのです。
新NISA、預貯金や一般的な株式投資とどこが違う?
新しいNISAは、銀行預金や一般の株式投資と比較して、どのような違いやメリットがあるのでしょうか?
最も大きな違いは「配当や値上がりなどの利益が出て儲かっても、税金を支払わなくてよい」という特典がある点です。
資産運用における「利益」は、時間の経過とともに発生します。節税効果もまた同様です。長く運用するほど利益が大きくなり、節税額も大きくなります。
このような特徴から、NISAは老後資金を形成するために最適な制度だといえます。
換金のタイミングは「お金が必要になったとき」でいい
新しいNISAは、非課税期間が無期限ですが、そうなると、今度は売却のタイミングに迷う方も出てくるでしょう。
筆者はその質問に、「売却のタイミングは、お金が必要になったとき」だと回答しています。
突然お金が必要になったら、そのときに売却してお金を引き出せばよく、老後に生活費が足りなくなったら、そのときに売却してお金を引き出せばいいのです。大切なのは、冒頭でも申しあげたとおり、値上がりしたから売る、値下がりしたから売る、といった行動をとらないことです。
また、1人あたりの上限1,800万円となっていますが、こちらも、早く埋めるほど節税効果を長く得られることになり、お得です。
家族全員の活用でお得になるが…高齢の親には注意点も
ご夫婦で新NISAを始めた場合、非課税枠の合計が3,600万円になり、18歳以上の子どもが2人いる4人家族なら、7,200万円に広がることになります。このことから、ご家族すべての方がNISA口座を開設し、できるかぎり大きな金額を投資に充てるといいといえます。ちなみに、家族による使い分けはありません。
このように「新NISAで投資しないのは損」くらいの勢いで、積極的に活用していただきたいのですが、1点だけ、相続については要注意です。
NISA口座に資産を持つ親が亡くなると、口座は相続財産となり相続税が課されます。せっかく所得税が非課税となったとしても、相続税は非課税になりません。
もし相続税対策を考える場合は、親から子ども、または孫へ、暦年贈与の非課税枠である毎年110万円を贈与し、子どもまたは孫が自分のNISA口座を使って投資するとよいでしょう。
「つみたて投資枠」「成長投資枠」の資金配分は?
新しいNISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に分かれており、使い分けに悩む方が多くいらっしゃいます。
しかし、つみたて投資枠と成長投資枠は、単なる資産の置き場所にすぎません。最もよい商品を選び、それを両方の枠で買えばよく、配分などを考える必要はありません。
高齢者は「富裕層」と「それ以外」で注意点が異なる
ご高齢の方が新しいNISAを利用する場合には、その方が資産家なのか、そうでないのかによって注意すべきポイントが異なります。
NISA口座を取り崩してお金を使う必要がない資産家の方は、そのまま亡くなるまでNISA口座で運用を続けるのがお勧めです。NISA口座を取り崩して老後の生活費に充てる予定の方々は、目先3年分くらいの生活費を、NISA口座から銀行預金へ移しておくのがいいでしょう。
※ 本記事の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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