「全部あなたのせいよ!」…仲良くしていた姑が“豹変”
四十九日が過ぎたころのことです。姑の和子さんから1本の電話がありました。
「もしもし? 相続のことなんだけど。相続権、私たちにもあるはずよね? 立派なマンションもあることだし、1度そちらに伺うわ。しっかり話し合いましょう」
「……え? ええと、まだなにも考えられる状態じゃなくて……。もう少し時間をいただけないでしょうか?」
姑の突然の電話に困惑しつつも、丁重に対応する優子さん。しかし、姑はそんな優子さんの衰弱した様子を気にかけることもなく、翌日自宅に押しかけてきました。
「子どもも作らないくせにこんな立派なマンションを独り占めして……。こんなマンションを無理に正人に買わせたから、こんなことになったのよ。全部あなたのせいよ! 絶対に許さない。息子のものは全部渡しなさい!」
開口一番、姑はものすごい剣幕で優子さんを責め立てます。心の傷も癒えておらず、憔悴しきっている優子さんは言葉を返す気力もありません。
しかし、仲がいいと思っていた姑の豹変にショックを受けながら、ふといつも一緒にいる舅がいないことに違和感を覚えた優子さん。舅に電話をかけ、「あの……いまウチにお義母さんがいらっしゃっているのですが……なにかご存じですか?」と話しました。
すると、電話口でなにも事情を知らなかった舅は慌てている様子です。「なに? あいつ……申し訳ない、すぐ引き取りに行くから」
駆けつけた舅は激昂し、「なにやってるんだ!」と姑を強く𠮟りつけました。そして、優子さんへ深く謝罪をし、姑を連れて帰ったのです。その後、姑が家を訪ねてくることはありませんでした。
やがて、優子さんの体調が少しずつ回復してきたころ、再び舅から連絡がありました。聞けば、「相続放棄をしたい」といいます。
しかし、優子さんは次のように話し、相続放棄を断りました。「子どもがいないから教育費もかからないし、私には安定した収入があります。お2人への相続は現金で渡し、マンションだけは私が所有権を相続するのはどうでしょうか?」この提案に、舅も快諾。その場で合意となりました。
愛する夫がのこした家を守れたとひと安心の優子さん。しかし、夫を失い、仲良く過ごせていたはずの姑とも絶縁となってしまい、優子さんには淋しさだけが残っています。
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