●東証の資料公表を受け、プライム市場では開示あり企業群の平均騰落率が開示なしを上回った。
●開示ありのうちでも、開示済み企業群の平均騰落率が相対的に良好で、英文ありではさらに良好。
●1営業日だけだが積極開示の企業群の株価は相対的に良好な反応、この傾向は今後も継続か。
東証の資料公表を受け、プライム市場では開示あり企業群の平均騰落率が開示なしを上回った
東京証券取引所(以下、東証)が1月15日に公表した資料、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況において、プライム市場上場企業とスタンダード市場上場企業のうち、取り組みを開示した企業と開示を検討中の企業の名前が明らかになり、その結果、開示がなかった企業も確認されました。今回のレポートでは、資料公表直後に、各企業群の株価がどのように反応したかを検証します。
資料は1月15日の取引終了後に公表されたため、同日と翌16日の終値で騰落率を計算します。対象はプライム市場とし、まず、企業群を「開示あり(開示済みおよび検討中)」と「開示なし(集計時点でのコーポレート・ガバナンス報告書に東証指定の文言の掲載なし)」に区分します。1月16日は、株式市場が全体的に調整色を強めましたが、開示ありの企業群の騰落率は平均で-1.03%と、開示なしの-1.13%を若干上回りました(図表1)。
開示ありのうちでも、開示済み企業群の平均騰落率が相対的に良好で、英文ありではさらに良好
次に、開示ありの企業群について、さらに「開示済み」と「検討中」に区分し、同様に1月15日から翌16日までの1営業日の騰落率を計算したところ、開示済みの企業群は平均で-1.01%、検討中の企業群は-1.12%でした。僅差ではありますが、下落率の小さい順に、取り組みを開示した企業群、開示検討中の企業群、開示がなかった企業群となり、おおむね想定される株価の動きとなりました。
ここで、英文の有無に注目し、開示済みと検討中について、それぞれ「英文あり」「英文なし」に区分し、株価の騰落率を計算してみます。その結果、開示済みのうち、英文ありが-0.97%、英文なしが-1.05%となり、検討中のうち英文ありが-0.92%、英文なしが-1.17%となりました(図表2)。開示済み、検討中とも、英文ありの平均騰落率は1%を下回っていることが分かります。
1営業日だけだが積極開示の企業群の株価は相対的に良好な反応、この傾向は今後も継続か
まだ1営業日だけの株価の反応ではありますが、積極的に取り組みの開示を行っている企業群の平均下落率は相対的に小さく、また、英文の記載がある企業群の平均下落率はさらに小さいという反応がうかがえます。なお、前述の通り、開示なしの企業群の平均騰落率は-1.13 %と、検討中としたものの、英文のない企業群の平均騰落率-1.17%を若干上回りました。
この点は、判断の難しいところですが、昨日のレポートでも触れた通り、今回、開示なしとされた一部大手企業でも、東証指定の文言がなかっただけで、実質的に株価を意識した経営を実施しているところもあり、その点が一定程度、騰落率に影響したとも推測されます。この先、営業日の経過とともに、各企業群の平均騰落率の差が拡大することも予想されるため、次回の一覧表の更新予定である2月15日までに、再度の検証を考えています。
(2024年1月17日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【日本株の動き】「開示に積極的な企業」の株価は相対的に良好な反応(解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト)』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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