彼にとって、トランプの娘とその夫がユダヤ教徒であることは、大きな意味をもっていました。次いで彼は、重い病気に侵された正統派ユダヤ教徒の少年の医療費を、ドナルド・トランプが肩代わりしていると聞いたと話しました。
その話が事実かどうかは、私には知る由(よし)もありません。私の目的が議論に勝つことにあったのなら、その話の真偽を問題にしたでしょう。ですが、私はしばらくじっと黙ってから、こう述べました。
「あなたはほかの人を助けることを、とても大切に思われているようですね」
「もちろんです。あなたもそうでしょう」
「それから、英雄的な人物がお好きなようです」
彼は声を立てて笑いました。
「そうかもしれません」
「私もです」
私たちはさらに、正統派ユダヤ教徒のコミュニティにおける生活や、私が教えているクラスについて話を続けました。自分の英雄に忠実であろうとしたり、人助けをしている人を助けようとしたりすることには、私も共感できます。ですから、もしこの男性のドナルド・トランプに対する信念に賛同できたなら、私もMAGA(トランプの選挙スローガンの略)のバンパー・ステッカーを貼ることになっていたでしょう。私たちの対話は友好的に終了しました。
意外なことに、残りの2回も同様でした。何度か口をぐっとつぐまなくてはならない場面もありましたが、相手の人物は賢明で悪意がないという前提に立って対話に臨んだことが功を奏しました。2度目の面談では、ロシア人移住者の自由への熱い思いに心の底から共感しました。3度目の対話では、真実を希求する弁護士の切なる思いが、我がことのように感じられました。
3回の対話で大統領候補者に対する意見を変えた人は、ひとりもいませんでした。それは目的ではないのです。しかし私は、相手に対する共感を育み、ほかの問題で合意するための基礎となりえる共通点を見出すことができました。
さらに、私と見解の異なる人たちが、かならずしも一枚岩でないこともわかってきました。面談者の見解は三者三様の経験に基づいていて、候補者に対する熱意のほどもさまざまで、それぞれが異なる理由からトランプの政策に共鳴していました。
このような結果は、予想もしていませんでした。実際に相手に耳を傾けなければ、自分の見解を他者に投影していることは、容易に見過ごされてしまうのです。
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