相手に注目することによって、相手の注目を引きつける
あなたがほかの誰かに注意を集中しているときには、相手はあなたに注目されている、あるいは理解されていると感じます。あなたは相手にしっかりと寄り添っていて、相手にもそれが伝わります。これは明らかな違いを生みます。
存在感に関する精神的な教えでは、自我(エゴ)の解体や、自分自身の心理という罠から抜け出すことに焦点が絞られます。存在感のある演技を指導することで知られる優秀な先生方も、同じ方針を採用しています。
私はこの教えをマーティン・バーマンから学びました。彼自身、まるで奇跡のような演技のできるプロの俳優でした。バーマンは、ただ一緒に台本を読むだけで、誰からでもアカデミー賞級の演技を引き出すことができました。彼が教え子たちに明かした秘訣はきわめてシンプルでした。いわく、舞台上でもっとも重要な人物はあなたの相手役であることを、つねに頭に置いておきなさい。
強いカリスマ性をもつ人物の多くは、同席する相手にそのとき自分が世界でもっとも重要な人物だと思わせることができるとよく言われます。カルト集団の指導者で犯罪者のチャールズ・マンソンが収監されていたサン・クエンティン刑務所を訪ねて、彼と一対一で接見した人物も、同じようなことを述べています。
「人心掌握に非常に長けた人物と会っているときには、こちらに対する強烈な関心を示されることが多い」
マンソンといると、その部屋には彼以外自分しかいないかのような気がしたと語っています(実際、彼らは二人きりだったわけですが、私の言いたいことはおわかりでしょう)。
注目の対象を自分ではなく「他者」へシフトする
注目の対象を自分から他者へシフトするための簡単な方法のひとつが質問です。謙譲表現を質問に置き換えてもいいですし、相手のことについて尋ねてみるのもいいでしょう。
人はみな自分の話をしたがるものだということは誰でも知っています。ですが、自分語りをしたいあまり、見知らぬ人たちに取るに足らない情報を伝えるために、金銭を支払うのも厭わないとは驚きです。
自己開示(セルフ・ディスクロージャー)のもたらす満足感について研究する神経科学者ダイアナ・タミルは、自分語りが金銭やセックス、チョコレートと同じ脳領域を活性化することを発見しました。だからこそ、私たちは質問をしてくれる人を好ましく思うのです。
一連の実験で、参加者は報酬をもらって他人についての質問に答えるか、無償で自分に関する質問に答えるかの選択権を与えられました。質問の内容はささいな事柄でしたが、自分についての質問に答えるという行為自体が楽しいので、参加者はもらえるはずだった報酬の約20%を諦めてまで、スノーボードが好きだとか、ピザにのったマッシュルームが大嫌いだとかいったことを伝えるほうを選びました。
自分の話をするのはとても楽しいので、私たちはこちらの話をうまく引き出してくれる人を高く評価します。アリソン・ウッド・ブルックスらの研究から、知り合ったばかりのときには、質問をたくさん投げかける人のほうが好印象をもたれ、お見合いパーティでも次のデートにこぎつける確率が高いことがわかりました。
また、相手の返答に関連した質問をさらに重ねると、深い関心の証と解釈されて、好感度がさらに増しました。ただし、質問者をより好意的に捉えたのはその質問に答えた人だけで、その場にいたほかの人たちはそうでなかった点は注目に値します。
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