教え子に与えた課題「共感チャレンジ」
相手の価値観を理解するために話を聴く練習として、教え子たちには「共感チャレンジ」という演習に挑んでもらっています。
このチャレンジでは、自分が関心を寄せるテーマについて、自分とは見解の異なる3人の話を聞いてもらいます。各人との対話を始めるにあたって、相手は賢明で悪意がないという前提(フレーム)に立ちます。そして相手が自分の立場を説明しているあいだ、その根底にある価値観を聴き取ります。
最後に、聴き取った価値観を相手にフィードバックして、妥協点を探ります。これでチャレンジは終了です。
この共感チャレンジの課題を学生に与える前に、私は自分でも試してみました。それは2016年、アメリカ大統領選挙の2ヵ月前のことでした。
私は当時、賢明な善意の人々がなぜ共和党のあの候補に投票しようとするのか理解できませんでした。そこで、まずはそうした人たちの声を聞いてみることにしたのです。リベラルな友人のなかには、私のプロジェクトに気分を害する人もいました。
「どうしていつも私たちばかり話を聞かなくちゃならないのよ?」
しかし私には、自分がほんとうの意味では話を聞いていなかったことがわかっていました。偽の極性化バイアス(思い込み)のせいで、私は尋ねもせずに、相手の見解を大げさに歪めていたのです。
予想外の結果
そんなわけで、私は3人の共和党支持者との面談を手配しました。ひとりめはニューヨーク在住の正統派ユダヤ教徒の男性でした。彼は車にトランプ支持のステッカーを貼っているせいで、見知らぬ人から日常的に嫌がらせを受けており、友人や家族とも軋轢が生じていました。なぜドナルド・トランプを支持するのかと訊くと、彼はヒラリー・クリントンに対する批判を声高にまくしたてました。彼が話し終えるまで、私は黙って聞いていました。
そしてこう言いました。
「クラクションを鳴らされても、怒鳴り散らされても、バンパー・ステッカーを貼り続けているところをみると、あなたはドナルド・トランプの熱烈なファンなんですね。ぜひともお伺いしたいのですが、彼のどこが好きなのか、教えていただけませんか?」
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