「引き出せない」弱点が、老後の資産形成では「メリット」に
イデコ併用の2番目の利点は、60歳まで引き出せないこと。これは通常、イデコの弱点と言われます。しかし目的が老後資金の場合、途中で引き出せないことは逆に良いことです。特に30~50代などは住宅資金や教育資金などで何かと物入りになります。NISAはいつでも引き出せるうえに、新NISAは引き出せば翌年にまた非課税枠が復活するので、気軽に引き出す人が多くなりそうです。
しかし、老後資金は誰にでも必要で、中高年になってから準備を始めるのでは間に合わなくなりがちです。引き出せないイデコで早いうちから老後資金を作っておくことは大事です。逆に言えば、教育・住宅資金に使うお金をイデコに投入してはいけないのは当然です。
特に老後に厚生年金が見込めない自営業者やフリーランス、企業年金がない会社の社員などは、老後の安定収入が不足しがちです。だからこそイデコは、こうした人たちの掛け金の上限額を多くしています。きちんと生かすべきです。
イデコ併用に重要性がある点の3つ目は、イデコの枠は使わなければ消えてしまうこと。新NISAでは若い時期に使わなくても中高年になってからまとめて活用することもできます。しかし、イデコはそうではありません。せっかくの優遇税制をフルに使うためには、若い時期からの活用が大事です。
重要性の4つ目は、特に早い時期から加入することにより、将来の受給時の非課税枠を拡大できること。イデコを一時金でもらう場合、加入期間20年までは年40万円、21年目からは年70万円の非課税枠が積み上がるのでしたね。今後の税制改正で、例えば全期間で年50万円など前後半の額が同じになる可能性がありますが、長期間加入するほど非課税枠が積み重なる仕組みは変わらないと思われます。できれば若い時期から、少額でもイデコに加入し続けることで、非課税枠を上乗せできます。
ただし逆に言えば、イデコの受給時の非課税枠はこれまでみたように退職金や公的年金と共通。退職金や公的年金の額が大きい人は、受給時にはなるべく手取りを多くするために様々な検討が必要になりますし、それでもイデコの資産がある程度、課税対象になることがあります。その場合、最後まで非課税のNISAの比率を多めにしておくのも選択肢です。
以上のことを考えると、「NISAだけでいいや」と考えてしまうのはとてももったいないことだと思います。
田村 正之
日本経済新聞社
編集委員
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>
注目のセミナー情報
【海外活用】12月7日(土)開催
従来の分散投資で資産を守れるのか?
新時代の富裕層が実践する
金融大国「シンガポール」や「フィリピン永住権」を活用した新・資産防衛法
【国内不動産】12月7日(土)開催
元サラリーマン大家の現役投資家社長が伝授…
インバウンド需要を逃すな!
《札幌・民泊投資》で勝ち組になる方法
【国内不動産】12月7日(土)開催
超・減価償却「築古アパート投資」の新発想!
〈節税+家賃収入+売却益〉投資元本2倍のしくみを大公開!
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】