(※写真はイメージです/PIXTA)

非課税期間が恒久化した「新NISA」では、配当の高い個別株に投資し、非課税で配当をもらい続ける手法も可能に。しかし、「配当重視の手法での銘柄選びには注意点もある」と、証券アナリスト(CMA)資格も持つ日本経済新聞編集委員、田村正之氏はいいます。田村氏の著書『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』より、新NISAで高配当銘柄戦略を遂行するために注意すべきポイントをみていきましょう。

受け取り方次第では配当や分配金が非課税にならない場合も

新NISAでは非課税期間が恒久化されました。成長投資枠では個別株の投資も可能ですので、例えば中高年世代が配当の高い個別株に投資し、恒久的に非課税で配当をもらい続ける手法も可能になりました。

 

ただ、NISA口座で株式の配当やETFの分配金を受け取る方法は、①ゆうちょ銀行などに「配当金領収書」を持ち込む、②銀行口座、③証券会社の取引口座での「株式数比例配分方式」―の3つがあります。このうち非課税で受け取れるのは③の「株式数比例配分方式」だけですので、他の方式を指定している場合は変更が必要です。

 

インデックス型投信で数千万円の資産を作っても、取り崩し期に入った後は、資産を少しずつ減らしていくことになります。ただ多くの人にとっては、資産を自分の手で少しずつ取り崩すこと自体が心理的な不安や抵抗感をもたらします。

 

個別株を保有したまま配当収入だけを生活費などに充てていくスタイルは、「資産を減らさないでお金をもらい続けられる」というイメージが安心感につながります。

 

「配当利回りが高いほど有利」という誤解

日本では個別株投資は100株単位が基本なので1銘柄当たりで多額の投資が必要になることが多いのですが、トヨタ自動車やNTT、アドバンテストやホンダが大幅な株式分割をして投資単位を引き下げるなど、少しずつ分散投資もしやすい状況になっています。

 

例えば1株を25分割したNTTでは、100株買うのに40万円が必要だったものが、1万円台後半に下がりました。

 

ただ、配当重視の手法での銘柄選びには注意点もあることを知っておきましょう。まずは配当を株価で割って計算する配当利回りの高さだけで選ばないこと。業績悪化予想が広がって分母の株価が下がっていれば、配当利回りは高くなるからです。実際に業績の悪化が起きれば配当も減らされてしまうことがあります。

 

同様に配当をEPSで割った配当性向が高すぎる場合は、利益に対して無理な配当をしている可能性が高いと言え、いずれ減配となるリスクがあります。もちろん配当性向が低すぎると配当を狙う投資の意味が薄れますから、配当性向としては高すぎず低すぎず、30~50%程度がひとつの投資目安になります。

 

仮に配当が維持されたとしても、それでいいというわけではありません。株式投資の総合的なリターンは「配当+株価の変化率」です。長期的に株価が下落傾向になってしまえば、総合的なリターンは悪化します。配当利回りや配当性向だけでなく、中長期の業績動向を併せてみておくべきです。

 

企業の業績動向に注目しておく

まずは売上高とEPSが中長期で拡大傾向にあるか、そして変動が激しすぎないかをみておきましょう。特に、過去の景気悪化局面で売上高やEPSがどう推移していたかは重要です。

 

便利なサイトのひとつが、企業業績の長期動向などをまとめた「IR.BANK」です。企業ごとに10~20期程度の長期間の推移が一覧できます。例えばKDDIのページでは営業収益(売上高)や各種利益、ROE、営業利益率の2008年3月期から2024年3月期予想まで17期間の一覧がみられます(2023年10月時点)。

 

このように、過去の業績や配当をみる場合のひとつのポイントが、リーマン・ショックの2009年3月期と、コロナ危機の2021年3月期です。

 

金融面でリスクが高まったことが経済全体の冷え込みにつながったリーマン・ショックと、コロナ禍で人が外に出かけることが少なくなりグローバルに製造やサービスの流れが停止したコロナ危機では、危機の性質が異なりました。

 

2つの種類の異なる危機、いずれにおいても業績や配当の落ち込みが小さかった企業であれば、その収益力の健全さがわかります。

 

また収益力の強さは営業利益率にも表れます。営業利益率の高さは、製品やサービスが容易に真似されない強みを持っていることを表すからです。ただし利益率は業種によっても異なりますので、同業種間での比較も重要です。財務分析の比較サイト「ザイマニ」では同業種間での財務指標などの比較などができます。

 

「連続増配企業かどうか」がひとつの判断要素に

高配当投資での銘柄選びでは配当額が増額基調にあるかもとても重要です。なぜなら配当を多く出す企業には、成長が鈍化して投資に振り向ける必要が少ないからこそ高配当を出しているケースも多いからです。そうなると、配当は多くても、低成長のため株価自体は長期で低迷することがあります。

 

成長力が維持できているかをみるうえで判断材料のひとつになるのが、連続増配企業かどうかです。連続して増配できているということは事業の成長が続いていることの表れである可能性が高いからです。IR.BANKなどで連続増配かどうかもチェックしておきましょう。

 

財務内容に急な悪化が起きづらいという意味では、たくさんの機関投資家にチェックされ続けている時価総額の大きな銘柄を、業種を分散して保有することも考えましょう。

 

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※本連載は、田村正之氏による著書『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

間違いだらけの新NISA・イデコ活用術

間違いだらけの新NISA・イデコ活用術

田村 正之

日経BP 日本経済新聞出版

“プロ”や周囲の言葉に惑わされちゃダメ! 新NISA時代にイデコ、公的年金も組み合わせた資産運用は、実際にどうすればいいのか? □一括より積立投資が有利? □株の比率は年齢に応じて変える? □一番資産を増やせるの…

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