日本政府は約1,200兆円もの莫大な借金を抱えています。多くの借金を抱え、国家破綻に陥った国もありますが、破綻していない国との違いはなんでしょうか? 本記事では、お金の向こう研究所の代表を務める田内学氏の著書『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』(東洋経済新報社)から一部抜粋します。日本の借金について考えてみましょう。
将来のツケになる本当の赤字
最近になって日本は大幅な貿易赤字に転落しているという。かつて、その品質の高さから飛ぶように売れていた日本製品だが、外国も技術的に追いつき、輸出を増やすのは簡単ではないらしい。加えて、高齢者人口が増える中、医療や介護の分野で働く人手を確保する課題も抱えている。
「輸出が増えないからといって、輸入をおさえるのも難しいですよね」
と七海もしぶい顔をする。食料やエネルギーの自給率の低い日本は、小麦などの食料品や、発電に必要なエネルギー資源を海外に頼っているそうだ。
「七海さんの言うとおりや。食べ物や電気は生活必需品やから、輸入をがまんするわけにもいかへん。これが高級ブランドのバッグなら、がまんすればすむ話やけどな」
しかし、貿易赤字が増えると本当に困るのだろうか。優斗の頭に疑問が浮かんだ。
「貿易赤字って、外国にお金が流れるのが悪いんでしょ。だったら、お金を印刷しちゃえばいいんじゃないですか」
「おもろいアイディアやな。せやけど、問題は国内にある日本円が足りなくなることやない。外国が日本円を大量に持つことや」
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お金の向こう研究所
代表
1978年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。
2019年に退職してからは、佐渡島庸平氏のもとで修行し、執筆活動を始める。著書に『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)、高校の社会科教科書『公共』(共著、教育図書)、『10才から知っておきたい 新しいお金のはなし』(監修、ナツメ社)などがある。『ドラゴン桜2』(講談社)、『インベスターZ 番外編「人生を変える!令和の投資教育」』(コルク)でも監修協力。
お金の向こう研究所代表。社会的金融教育家として、学生・社会人向けにお金についての講演なども行う。
インスタグラム(@tauchimnb)やnote(http://note.com/mnbtauchi/)でも、お金や経済の情報を発信している。
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