日本人の国民性を表す「貿易黒字」
授業中に先生にあてられたときのように、優斗の肩に力が入った。
「えっと、輸出だとお金が入って、輸入だとお金が出るから……、輸入より輸出が多いと、貿易黒字になります……よね?」
不安そうな内心を察してか、ボスは優しくほほえんだ。
「難しく考えんでも大丈夫や。優斗くんの家が独立して、1つの国を作ったことを考えてみたらええわ」
優斗の国では、トンカツが輸出品で、輸入しているのは服や電気などの生活必需品。トンカツがたくさん売れて貿易黒字になれば、この国のお金は貯まっていく。お金が貯まるということは、外国のためにしっかり働いているということだ。将来世代は、そのお金を使って、外国に働いてもらえるとボスは説明してくれた。
「なるほど。そのように貿易をとらえているんですね」
と、七海が感心する。
ボスによると、日本がこれまでに積み上げてきた貿易黒字はなんと250兆円もあるそうだ。その巨額の数字こそが、日本人の国民性を表しているという。
それは、日本人の勤勉さだ。
「借金をしても、なまけてお金を外に流してきたわけやない。むしろ、外からお金を稼いできた。自分たちのために働いた上に、外国のために250兆円分も働いてきたんや」
「なんだ。心配させないでくださいよ」
優斗は胸をなでおろしたが、ボスの話はここで終わらなかった。
「ぬか喜びさせて申し訳ないが、このままやと日本はやばいんや」
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