日本政府は約1,200兆円もの莫大な借金を抱えています。多くの借金を抱え、国家破綻に陥った国もありますが、破綻していない国との違いはなんでしょうか? 本記事では、お金の向こう研究所の代表を務める田内学氏の著書『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』(東洋経済新報社)から一部抜粋します。日本の借金について考えてみましょう。
日本人の国民性を表す「貿易黒字」
授業中に先生にあてられたときのように、優斗の肩に力が入った。
「えっと、輸出だとお金が入って、輸入だとお金が出るから……、輸入より輸出が多いと、貿易黒字になります……よね?」
不安そうな内心を察してか、ボスは優しくほほえんだ。
「難しく考えんでも大丈夫や。優斗くんの家が独立して、1つの国を作ったことを考えてみたらええわ」
優斗の国では、トンカツが輸出品で、輸入しているのは服や電気などの生活必需品。トンカツがたくさん売れて貿易黒字になれば、この国のお金は貯まっていく。お金が貯まるということは、外国のためにしっかり働いているということだ。将来世代は、そのお金を使って、外国に働いてもらえるとボスは説明してくれた。
「なるほど。そのように貿易をとらえているんですね」
と、七海が感心する。
ボスによると、日本がこれまでに積み上げてきた貿易黒字はなんと250兆円もあるそうだ。その巨額の数字こそが、日本人の国民性を表しているという。
それは、日本人の勤勉さだ。
「借金をしても、なまけてお金を外に流してきたわけやない。むしろ、外からお金を稼いできた。自分たちのために働いた上に、外国のために250兆円分も働いてきたんや」
「なんだ。心配させないでくださいよ」
優斗は胸をなでおろしたが、ボスの話はここで終わらなかった。
「ぬか喜びさせて申し訳ないが、このままやと日本はやばいんや」
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お金の向こう研究所
代表
1978年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。
2019年に退職してからは、佐渡島庸平氏のもとで修行し、執筆活動を始める。著書に『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)、高校の社会科教科書『公共』(共著、教育図書)、『10才から知っておきたい 新しいお金のはなし』(監修、ナツメ社)などがある。『ドラゴン桜2』(講談社)、『インベスターZ 番外編「人生を変える!令和の投資教育」』(コルク)でも監修協力。
お金の向こう研究所代表。社会的金融教育家として、学生・社会人向けにお金についての講演なども行う。
インスタグラム(@tauchimnb)やnote(http://note.com/mnbtauchi/)でも、お金や経済の情報を発信している。
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